Subject   : ミーム学

カテゴリー  : 人文  


 ミーム学
ミーム学は、心に関する科学であり、同時に社会における文化形成の働きを解明する。ミーム学を論じた心理学者にはヘンリー・プロトキン(Henry Plotkin)がいる。以下にリチャード・ブロディによる説明を記述する。

ミームとは、生物学者のリチャード・ドーキンスが作った言葉であり、もともとの彼の定義では、文化の伝達あるいは複製の基本単位のことである。後に、リチャード・ブロディが『ミーム―心を操るウイルス』(森 弘之訳、講談社、1998年)の中で、ミームとは人間の心を構成する情報の単位で、ミームが他の心へと複製されるような様々な出来事に影響するものとして定義した。ブロディによれば、脳をコンピュータのハードウェアに喩えれば、ミームはソフトウェアである。そしてミームは遺伝子のように人々の心から心へと複製されていく。その過程で変化し、あるミームが生き残ることで進化する。これは遺伝子が自己の複製を作り、突然変異と自然淘汰によって進化することとの類推である。

遺伝子は、遺伝子の視点から考えれば、人間は遺伝子を複製するための乗り物である。同じように、ミームの視点から見れば、心や文化、社会は、ミームが自己複製を作るための乗り物に過ぎない。ミームは心に入り込み、他の心へ自己の複製を作るように人を動かすのである。ただし誤解してはならないのは、「ミームの視点から考える」というのは、あくまでも分かりやすい考え方をするためであって、実際にミームが視点を持っているということではない。

ミーム学は進化心理学の考え方を使う。つまり、ミームのハードウェアである脳がどのように進化してきたかという分析に基づくのであるが、大事なポイントは、人間の脳が有史以前からほとんど進化していないことである。例えば、有史以前、脳は性的衝動を持つように進化し、現在も性の衝動は強い。そのために、性に関する情報や考え、つまり性に関するミームは世の中に広まりやすいと考えられる。
 ⇒ 人文学〔じんぶんがく〕

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