Subject  : 腹膜炎

カテゴリー: 健康・医療情報 > 


 腹膜炎
腹膜炎は、通常は感染症を伴う腹腔と腹膜の炎症です。

腹膜炎は、腹腔内の感染した臓器から細菌を含んだ内容物が広がって起こります。胃、腸、胆嚢、虫垂が穿孔して起こることが多く、また別の部位からの感染が血流を介して腹膜へ広がることもあります。腹膜(腹腔と臓器を覆っている膜)は感染には非常に強いので、腹腔内細菌汚染が続かなければ、腹膜炎が進行することはなく、治療によって腹膜も回復します。
腹膜炎はいくつかの理由で手術後にも発症します。手術中に胆嚢や膀胱、腸が傷つくと、細菌が腹腔内へ漏出したり、腸の吻合手術時に内容物が漏れ、それらが原因で腹膜炎になることもあるのです。
腹膜透析(腎不全の治療)を受けている人にも、腹膜炎はよく起こります。腹腔に留置したドレーン(排液管)を通して細菌が入ることが原因です。肝不全や心不全では、腹腔に水がたまって(腹水)、それによって感染します。
腹膜炎は、感染症がなくても腹部臓器の炎症によって起こります。たとえば膵臓の炎症(急性膵炎)により腹膜炎を発症することがあります。また手術用の手袋についているタルク(滑石)やデンプンでも腹膜炎は起こります。
突発性腹膜炎は腹腔に水がたまっている(腹水)場合に起こります。過剰な飲酒によって肝疾患を患っている人に多い疾患です。この場合、腹水の感染は明らかな感染源がないのに起こります。

 【症状】
嘔吐、発熱(38℃以上)、腹部の圧痛がみられます。その他の症状は、感染症が炎症に続いて生じたかどうか、また感染症の種類や広がりによっても異なります。腹痛は限局したものもあれば腹部全体に及ぶものもありますが、いずれの場合もひどく痛みます。

急性腹膜炎は、ショックをともなうほどの激しい腹痛ではじまるのがふつうです。最初は鋭い痛みが持続性におこりますが、やがて炎症がひろがるにつれて腹部全体が痛んで、腹壁は硬くなります。初期には吐きけや嘔吐、しゃっくりなどがおこることもありますが、やがて麻痺性のイレウスをおこして、その症状が現われてきます。

骨盤腹膜炎は、急性腹膜炎と同じですが、とくに下腹部の強い持続性の痛みや、全身のふるえ(悪寒)をともなって38〜40度の高い熱がでることもあります。 排便・排尿時やからだを動かすときに激しい痛みを訴えます。化学療法によって炎症は完全に治ります。

慢性腹膜炎では、微熱、腹部膨満感などを訴え、腹水がたまることもあります。診断には]線検査や白血球検査、などが役立ちます。
腹膜炎は、ただちに治療をしなければすぐに合併症が起こります。放置しておくと、1つまたは複数の膿瘍が形成され、感染症が組織の瘢痕(癒着)を残して腸管を閉塞します。その結果、便を押し出す腸の力(ぜん動)が止まります(イレウス)。血流から体液がにじみ出て腹腔へたまります。重度の脱水症を来し、血流から電解質(ナトリウムやカリウムなど)が失われます。これに続いて、呼吸障害、腎不全、肝不全、広範囲にわたる血栓症などの主要な合併症が起こります。

 【治療】
虫垂炎、消化性潰瘍の穿孔、憩室炎の可能性があれば、ただちに試験開腹を行います。急性膵炎、女性の骨盤内臓器の炎症性疾患、突発性腹膜炎が原因と考えられれば、緊急手術は行われません。
しばしばいくつかの抗生物質が一度に投与されます。またチューブを鼻から胃または腸へ入れて、たまっている水やガスを出します。失った水分と電解質は静脈からの投与で補給します。
 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]