Subject  : 人格障害

カテゴリー: 役立つ情報 / 健康・医療情報 


 人格障害
人格障害がある人は、認知、反応、外界との関係のパターンに柔軟性がなく、社会にうまく適応できないという特徴があります。
人格障害の人は融通が利かず、問題に対して適切に対処できない傾向があり、しばしば家族、友人、職場の同僚との関係の悪化を招きます。こういった不適応は多くの場合、青年期から成人期初期にかけて始まり、時を経ても変わることはありません。 人格障害の人は、自分の思考や行動のパターンに問題があることに気づいていません。このため自分から治療や助力を求めることはあまりありませんが、その行動がほかの人に迷惑をかけているなどの理由で、友人や家族、あるいは社会的機関によって医療機関に連れて来られることがあります。人格障害の人は、アルコール依存や薬物依存など身体的な問題につながる行動、自己破壊行動、無謀な性行動、心気症、社会の価値観との衝突などを起こす危険が高くなります。
人格障害は3つの群に分類されます。A群は奇妙で風変わりな行動、B群は演技的で移り気な行動、そしてC群は不安や抑制を伴う行動を特徴とします。

◆ A群:奇妙で風変わりな行動
 ○ 妄想性人格
妄想性人格の人は、他者を信用せず懐疑的です。特に証拠はないのに人は自分に悪意を抱いていると疑い、絶えず報復の機会をうかがっています。このような行動は人から嫌がられることが多いため、結局は、最初に抱いた感情は正しかったと本人が思いこむ結果になります。一般に性格は冷淡で、人にはよそよそしい態度を示します。 妄想性人格の人は、他者とのトラブルで憤慨して自分が正しいと思うと、しばしば法的手段に訴えます。対立が生じたとき、その一部は自分のせいでもあることには思い至りません。職場では概して比較的孤立した状態にありますが、非常に有能でまじめです。

 ○ 分裂病質人格
分裂病質人格の人には、内向的、引っこみ思案、孤独を好むといった傾向があります。性格は冷淡で、人にはよそよそしい態度を取ります。いつも自分の考えや感情に没頭していて、他者と親しくなることを恐れます。無口で空想を好み、実際に行動するよりも理論的な思索を好みます。空想することが、対処のメカニズム(防衛機制)としてよくみられます。

 ○ 分裂病型人格
分裂病型人格の人は、分裂病質人格の人と同様に、社会的にも感情的にも他者から隔絶しています。また、思考や認知、会話にみられる奇妙さは、統合失調症(精神分裂病)(統合失調症と妄想性障害: 統合失調症(精神分裂病)を参照)に似ています。ときに統合失調症の人で発症以前に分裂病型人格がみられる場合がありますが、分裂病型人格の成人のほとんどは、統合失調症になることはありません。 何か特別な思考や行動をすることでものごとや人をコントロールできるという考え(魔術的思考)を抱いている人がいます。たとえば、だれかに対して怒りの感情を抱くと、その人に災いを起こすことができると信じているような場合がありまます。分裂病型人格の人には妄想もみられます。

◆ B群:演技的で移り気な行動
 ○ 演技性(ヒステリー性)人格
演技性人格の人は際立って人の注目を集めたがり、演技的で極端に感情的で、外見をひどく気にします。表現力豊かで生き生きしているため、友人はすぐにできますが、たいていは表面的で一時的な関係に終わります。感情表現にはしばしば大げささや子供っぽさ、わざとらしさが感じられ、人の同情や関心(しばしばエロチックな関心や性的な関心)を集めたいという意図がうかがわれます。
演技性人格の人は、性的欲望を挑発するような行動を取ったり、性的ではない人間関係にまで性的な要素を持ちこもうとする傾向があります。しかし、本当に求めているのは性的関係ではなく、誘惑的な行動の裏に、だれかに頼りたい、守ってほしいという願望が隠れていることもしばしばあります。演技性人格の人が心気症的な性質を帯びている場合もあり、注意を引くために体の不調などを大げさに訴えることがあります。

 ○ 自己愛性人格
自己愛性人格の人は優越感をもっていて、人から称賛されたがり、人に共感する心が欠如しています。自分の価値や重要性を過大評価する傾向があり、心理療法士はそれを「誇大性」と表現します。この人格の人は、失敗、敗北、批判などに極度に敏感です。高い自己評価を満たせないと、すぐに激怒したり、ひどく落ちこみます。自分は他者よりも優れていると思いこんでいるので、称賛されることを期待し、他者は自分をねたんでいるのではないかと疑うこともよくあります。自分の欲しいものは何でもすぐに手に入るのが当然と考えていて、他者の欲求や信念は重要視していないため、ほかの人を平気で利用します。周囲に迷惑な行動を起こし、自己中心的、傲慢、利己主義とみなされます。この人格障害は概して成功した人にみられますが、成功していない人にも生じることがあります。

 ○ 反社会性人格
反社会性人格は、以前は精神病質人格、社会病質人格と呼ばれていた障害です。この人格障害は男性に多く、他者の権利や感情を無神経に軽視する傾向を示します。人に対しては不誠実で、ぎまんに満ちた言動をします。欲しいものを手に入れたり、自分が単に楽しむために人をだまします(自己愛性人格の人が、自分は優れているのだから当然だと考えて人を利用するのとは異なった考え方)。 反社会性人格の人は、衝動的かつ無責任に、自分の葛藤を行動で表現するのが特徴です。不満があると我慢ができず、敵意を示したり暴力的になったりすることがあります。自分の反社会的な行動の結果を考えないことが多く、他者に迷惑をかけたり危害を加えたりしても、後悔や罪の意識を感じません。むしろ、言葉巧みに自分の行動を正当化したり、ほかの人のせいにします。我慢させたり罰を与えたりしても、それによって反社会性人格の人の行動が改まったり、判断力や慎重さが身につくことはなく、かえって本人が心に抱いている過酷で情に動じない世界観が揺るぎのないものとなります。 反社会性人格の人は、アルコール依存、薬物依存、性的に逸脱した行動、乱交、投獄といった問題を起こしやすい傾向があります。仕事に失敗しがちで、住居を転々と変えるケースもよくみられます。多くの場合、反社会的な行動、薬物などの乱用、離婚、肉体的虐待などの家族歴があり、小児期に情操面での養育放棄(ネグレクト)や虐待を経験していることもあります。反社会性人格の人は一般の人に比べて寿命が短い傾向があります。この障害は年齢とともに治まっていくか、安定する傾向があります。

 ○ 境界性人格
境界性人格は女性に多く、自己のイメージ、気分、行動、対人関係が不安定です。反社会性人格に比べて思考過程に乱れがみられ、その攻撃的な感情はしばしば自分自身に対して向けられます。演技性人格の人よりも怒りっぽく、衝動的で、自分のアイデンティティ(自己同一性)に混乱がみられます。境界性人格は成人期初期にはっきりと現れてきますが、年齢とともに罹患率は低下します。 境界性人格の人はしばしば、小児期に保護者による養育の放棄や虐待を経験しています。その結果、虚無感、怒り、愛情への飢餓感があります。思いやりをもって接してくれている人から見捨てられることへの恐怖感に駆られると、気分が一転して激怒し、しばしば異常な激しさで怒りを表します。気分の変化とともに、周囲の世界、自分自身、他者に対する見方も極端に変化し、すべては黒か白、善か悪かで、その中間は存在しないと考えます。

◆ C群:不安や抑制を伴う行動
 ○ 回避性人格
回避性人格の人は、他者から拒絶されることに過度に敏感で、人間関係を含めて新しいことを始めるのを怖がります。愛情や受け入れられることに対して強い欲求を抱いているにもかかわらず、失望や批判を恐れて、親密な人間関係や社会的状況を避ける傾向があります。分裂病質人格とは異なり、孤独感や他者とうまくかかわれないことについて率直に悩みます。また、境界性人格と違って、拒絶に対して怒りを向けるのではなく、引きこもり、内気で憶病な様子をみせます。回避性人格は全般的なタイプの社会恐怖に類似しています

 ○ 依存性人格
依存性人格の人は、大きな決断や責任は必ず他人まかせにし、自分の欲求より、頼りにしている相手の欲求を優先させます。自信に欠け、自分のことを自分でする能力について強い不安を感じています。自分には決められない、何をしたらよいかわからない、どうしたらよいかわからないといった弱音を吐くこともしばしばあります。このような行動を取る一因として、ほかの人には自分よりも能力があると信じていることが挙げられます。また、頼りにしている人を怒らせないように、自分の意見を言いたがらないという面もあります。依存性人格は、他の人格障害の人にもよくみられる側面ですが、他の障害に特有の顕著な特性に隠れ、通常は目立たなくなっています。ときに、長く病気をわずらっている成人が依存性人格になることがあります

 ○ 強迫性人格
強迫性人格の人は秩序、完ぺき性、管理といったことにこだわります。信頼できる人で、頼りになり、きちんとしていて、きちょうめんである一方、柔軟性に欠けるため変化にうまく適応できません。慎重で、1つの問題のあらゆる局面を比較検討するため、決断を下すことが苦手です。まじめで責任感がありますが、誤りや不完全さに耐えられないため、仕事を最後まで全うできないことがよくあります。精神障害の強迫性障害(不安障害: 強迫性障害を参照)とは異なり、強迫性人格の場合は、自分の意思に反して反復的に想起される強迫観念や儀式的行為はありません。 強迫性人格の人は成績が良かったり高い業績を上げていることも多く、特に、きちょうめんさや細心な注意深さが求められる科学などの知的分野での成功者に多くみられます。しかし、責任に伴う不安に常に悩まされるため、成功してもそれを喜ぶことができません。感情的な問題、人間関係、自分ではコントロールできない状況、他者に頼らざるを得ない状況、予測できない出来事が起こる状況には不安を感じます。
 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]