Subject   : (熱陰極型)電離真空計

カテゴリー  : 学術情報 


 (熱陰極型)電離真空計
電離真空計は、気体分子を電離させ、生成したイオンの数から圧力を求める真空計です。高真空から超高真空領域で広く用いられており、定量性に優れているのが特徴です。 気体を電離させるための電子を、加熱したフィラメントから得ており、正確には熱陰極型電離真空計とも呼ばれます。
市販の電離真空計には、三極管型、B−Aゲージ、シュルツ型の3つの型があります。
測定範囲 メモ
三極管 10μPa 〜 0.1 Pa フィラメントを中心として、その周りにグリッドが、更にその外側をコレクタが同心円状に配置されています。
シュルツ 1 mPa 〜 10 Pa フィラメントを挟んでグリッドとコレクタが対向
B-Aゲージ 10 nPa 〜 0.1 Pa Bayarad-Alpert の頭文字。中心に金属細線のコレクタが、その周囲にグリッドが配置され、フィラメントは更に外側の一隅にあります。三極管型のFとCの位置が逆。
 電離真空計の構造と原理
三極真空管と似ているところがあります。
測定子は、熱電子を放出するフィラメント、電子を加速し、捕集する陽極グリット (集電子電極)、イオンを捕集するコレクタから構成されています。
フィラメント(F)に通電すると、熱電子が放出されます。 電子は正電圧が印加されたグリッド(G)に向かって加速されますが、 グリッドは細い金属線や網目状になっていて面積が小さいため、大部分は 捕集されずに通り抜けてしまいます。しかし、対向する位置にあるコレクタ (C)には、負電圧が印加されているため、電子はコレクタには到達できず、 手前でUターンすることになります。このように、電子はフィラメントと コレクタとの間を往復運動し、ついにはグリッドに捕らわれます。
フィラメントとコレクタに挟まれた空間に気体分子が存在すると、 往復運動している電子が衝突し、イオンと電子に電離することがあります。 F−G間で生成されたイオンはフィラメントに、G−C間で生成された イオンはコレクタに捕集されます。
コレクタへの捕集効率をa、電子が気体分子を電離する確率をσ(注2)、気体分子の密度を n、フィラメントから放出される熱電子の電流をIe、電子がグリッドに捕集されるまでに空間を飛行する平均距離を L とすると、コレクタに流れる電流(イオン電流) Ii は、   Ii = Ie・nσLa      (1) と表されます。L 、a および σ は定数ですから、Ie が一定となるように制御すれば、Ii は n に比例します。理想気体を考えるとp = nkT (k:ボルツマン定数、T:気体の絶対温度)ですから、結局 Ii は圧力 p に比例し、イオン電流から圧力を知ることができます。具体的には式(1)より、   Ii = SIe・p    (2) となります。電子電流 Ie は制御できますので、比例定数 S には含まれません。 S は電離真空計係数または感度と呼ばれ、圧力の逆数の次元を持ちます。S = σLa/kT となることは明らかですが、a や σ 等の値を理論的に求めることは容易では無いため、通常は実験によってS を決定します。一般的な電離真空計の場合、S は 0.1〜0.3 1/Pa 程度です。例えば、S = 0.2 1/Pa、Ie = 5mA の場合、p = 0.1mPa に対して Ii = 0.1μA になります。

● エクストラクタ付電離真空計
 ⇒ 真空計
 ⇒ 熱陰極電離真空計の比感度係数
 ⇒ 圧力の換算

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