Subject   : 老化現象

カテゴリー  : 学術情報 > 生理学 


 老化現象
 老化とは、加齢に伴って起こる非可逆的な生理機能の低下のことです。 寿命が近づくにつれて人間は、耳が遠くなったり(難聴)、血管が硬く なったり(動脈硬化)、 骨が折れやすくなったり(骨粗しょう症)、 眼の水晶体が濁ったり(白内障)、 頭の働きが衰えてきたり(老人性痴ほう)します。これが老化現象です。 機能の衰えの多くは、臓器の縮小という形で現れてきます。手足の筋肉はやせ細り、各種臓器も小さくなり、骨の密度も低下してきます。もちろん脳細胞も減り続け、CTスキャンなどで調べると脳そのものが委縮しているのが観察されます。細胞レベルで考えると、人のからだから細胞を1個取り出して培養してみると、最初のころはバクテリアのように活発に分裂を始めますが、いずれ増殖をやめて、ついには死んでしまいます。この分裂できる回数が多いほど若い細胞ということになります。

この細胞の分裂能力だけで老化現象の説明ができれば、ことは簡単なのですが、そういかないのが老化研究の難しいところです。例えば、脳の神経細胞や心臓の筋肉などは、生まれた時にすでに増殖を止めており、以降増殖しません。細胞そのものの機能も、年をとるにつれてさまざまな形で衰えていきます。つまり、細胞の老化の問題には、細胞の数の問題と質の問題の2つの側面があるのです。ところで、人間のからだの中にも例外的にバクテリアのようにいつまでも分裂できる不死の細胞があります。それは生殖細胞とがん細胞です。

生物界では老化しない生物の方が多いからです。DNA(RNAの場合もありますが)をたんぱく質の膜に包んだだけのウイルスは、動くことも、食べることもなにもしない、生きているのか死んでいるのかすらよく分からない不思議な存在で、永遠の命を持っているという言い方もできます。また、バクテリアのような単細胞生物は、環境さえ整えれば、1つが2つに、2つが4つに、4つが8つにと、無限に分裂して、いくらでも増えていきます。そこには、老化して死んでいく個体などありません。つまり単細胞生物もまた不老不死なのです。杉の木だって銀杏の木だって、環境さえよければ老化などという言葉とは無縁に何百、何千年と生き延びて天を突くような大木となります。

 ところが人間の場合は、どんなによい環境で生活しても、長寿の限界は120歳前後とされています。もし、まったくばい菌のいない場所で、十分な栄養下で生活したとしても、人間などほ乳動物の寿命には必ず限界があるのです。
老化はからだ全体で徐々に進行していく現象で、単一の器官や物質が原因で起こる病気ではありません。従って、感覚器の老化予防といっても、基本的にはいわゆる老人病とされる痴ほうや動脈硬化、骨粗しょう症などの予防と同じ考え方になります。つまり、規則正しくストレスのない生活、緑黄色野菜や牛乳などを十分にとるなどバランスのよい食事、毎日の適度な運動などで、これは生活習慣病の予防とも共通しています。あえて言えば、皮膚や眼の老化予防として、戸外で紫外線をあまり浴びないように注意することがそれに付け加わります。

 ⇒ 老化のメカニズム

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