Subject   : アゴニストとアンタゴニスト

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 アゴニストとアンタゴニスト
アゴニストとは生体内の受容体分子に働いて 神経伝達物質ホルモンなどと同様の機能を示す作動薬のこと。

アゴニスト(Agonist)とは、 ホルモンなどの生理活性物質の受容体(レセプター)に結合して、その生理活性物質が持つ作用と同じ、または類似の作用を発現する物質のこと。アゴニストが生体に入ると、そのホルモン量が増えたのと同様の効果をあらわす。

現実に生体内で働いている物質は通常アゴニストとは呼ばない。それは、持っている作用が生体物質とまったく同一であれば利用する意味がない(その物質そのものを用いればよい)ためである。そのためアゴニストとされる物質は、生体物質とは少し違った性質を持っている。多くの場合、それは分子間選択性であったり、標的分子への結合力であったりする。
たとえば、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質としてグルタミン酸があるが、その受容体は4種類存在する。NMDAと言う物質はその4種のグルタミン酸受容体のうち、NMDA型グルタミン酸受容体と呼ばれる受容体だけに作用し、残りの3種には作用しない。このような場合、NMDAをNMDA型グルタミン酸受容体に対する選択的アゴニストと呼ぶ。
環境ホルモンでは、合成ホルモン剤であるジエチルスチルベストロール(DES)やp-オキシPCB(PCB代謝物)は女性ホルモンのアゴニストとして作用することが知られているが、その作用の強さは女性ホルモンに比べかなり弱い。

対義語としてアンタゴニストがある。これは、同様に受容体に作用するが、作用する事で受容体の活動を抑制する薬剤のことである。

しかし、受容体を活性化するアゴニストの中にも、活性化度が生体分子に比べて非常に低く、作用するものの作用があまりにも弱い、と言うような薬剤も存在する。このようなアゴニストをパーシャルアゴニストと言う。パーシャルアゴニストは受容体にプラスに働きながらも、本来のリガンドの結合を阻害してしまう(すでにこのパーシャルアゴニストが作用している)ため、結果として抑制の方向に働いてしまう事がある。このように、アゴニストとアンタゴニストの区別は、必ずしも容易ではない。

 ⇒ ホルモン(hormone)

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