Subject   : シトクロム(cytochrome)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 シトクロム(cytochrome)
シトクロム(cytochrome)とは酸化還元機能を持つヘム鉄を含有するヘムタンパク質の一種である。1886年にMacMunnによって存在が指摘され、1925年にKeilinによって酸化還元機能を持ち好気呼吸に重要な役割を持つことが実証された。別名、チトクロム、サイトクロム。シトクロームなどと伸ばすこともある。

 一部の絶対嫌気生物を除き,シトクロムは全生物に存在。酸化還元酵素でヘムに結合した鉄イオンのの変化で電子を運ぶ。 Fe3+ + e- → Fe2+ ヘムの型により,a型,b型,c型の3種に分類される。
a型: 長いイソプレン鎖がつき,ホルミル基がある。
b型: ヘモグロビンと同じヘムである。
aとb型は2個のHis残基がFeの第5,6位に配位結合している。
c型: ヘムの側鎖がタンパク質のCys残基に共有結合している。
HisとMet残基がFeの第5,6位に配位結合している。

シトクロムは含有しているヘムの種類によって以下の種類に分かれる。
シトクロムa(フォルミルポルフィリン鉄)
  シトクロムa1
  シトクロムa3
シトクロムb(プロトポルフィリン鉄)
  シトクロムb2
  シトクロムb5
  シトクロムb559
  シトクロムb563
シトクロムc(メソポルフィリン誘導体鉄)
  シトクロムc1
シトクロムf
シトクロムd(ジヒドロポルフィリン鉄)

また、シトクロムP450という呼称を持つタンパク質が存在するが、モノオキシゲナーゼでありシトクロムではない。
シトクロムの名称は上記の分類のほかに、生物種名や長波長の吸収帯のnmの数で付けられることが多い。

シトクロムはヘム鉄を含有しているので酸化還元電位が高く、概して電子伝達系に存在している。特に呼吸鎖複合体IIIは本体がシトクロムの複合体(シトクロムbc1複合体)であり、複合体IVではシトクロムcを酸化して電子伝達を行う。光合成においてもシトクロムb6/f複合体(呼吸鎖複合体IIIに似る)として存在し、同様に酸化還元反応に寄与している。嫌気呼吸においては硝酸還元や硫酸還元などで電子供与体として機能している。 またヘム鉄にはFe2+(還元型)とFe3+(酸化型)が存在し、これらが可逆的に変換することにより電子伝達を可能にしている。各々の酸化還元電位は様々な酸化還元電位を持つシトクロムの存在は生物体での高いエネルギー効率に寄与しているといえる。 特殊な役割として、ミトコンドリアのシトクロムcがアポトーシスに関与する(細胞質に漏れることでアポトーシスの引金を引く)ことが知られている。

 ⇒ 呼吸鎖

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]