Subject   : PAI-1 (プラスミノーゲン活性化抑制因子)

カテゴリー  : 学術情報 > 化学


 PAI-1 (plasminogen activator inhibitor-1)
 PAI-1は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の活性を消失させ、線溶系を抑制するポリペプチドです。敗血症、動脈硬化等になると高値を示します。

 プラスミンは、プラスミノーゲンがt-PAにより活性化を受けて産生される酵素で、フィブリン、フィブリノーゲンを分解する作用をもちます。一方、PAI-1は血管壁内皮細胞および肝臓から放出されるポリペプチドで、血漿や血小板に存在する線溶阻止因子です。

 血栓溶解時には、PAI-1がt-PAと複合体を形成してt-PAの活性を消失させ、プラスミン産生を抑制することで線溶を抑制しています。また、プラスミンは血栓溶解のみならず、組織破壊と修復、細胞の移動、血管新生、排卵と着床、動脈硬化などにも関与しています。PAI-1はこの反応系を抑制する働きをもつため、一連の反応開始段階でPAI-1はt-PAを阻害し、プラスミンによる線維素溶解作用を制御しています。

 敗血症ではPAI-1が高値を示します。高値になる機序として、エンドトキシンが血管内皮細胞に作用し、組織因子を発現させPAI-1の産生を強く刺激しているためと考えられています。また、動脈硬化の時にはリポプロテインが高値となり、このリポプロテインが血管内皮細胞系におけるPAI-1の産生を選択的に増加させて不足を補う(up regulation)ためPAI-1が高値を示すと考えられます。
 PAI-1には、このほか急性相反応物質としての性格があり、種々の炎症性疾患で上昇が報告されています。
基準値 : 43.0 ng/ml以下
高値を示す病態 : 敗血症、動脈硬化、心筋梗塞、肝疾患、悪性腫瘍、重症感染症、DIC
低値を示す病態 : 先天性PAI-1欠乏症

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