Subject   : キノン補酵素

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 キノン補酵素
キノン (quinone) は、一般的にはベンゼン環から誘導され、2つのケトン構造を持つ環状の有機化合物の総称である。七員環構造のものなど、非ベンゼン系のキノンも知られている。
略称 種類 メモ
PQQ ピロロキノリンキノン 酸化還元反応に関与 → 電子伝達体
TPQ トパキノン 酸化的脱アミノ反応
TTQ トリプトファン-
トリプトフィルキノン
メチルアミン酸化還元
LTQ リシンチロシルキノン ペプチド内リシンの酸化
CTQ システニル-トリプトファンキノン アミンの酸化還元


 ● ピロロキノリンキノン(pyrroloquinoline quinone; PQQ)
ピロロキノリンキノン(pyrroloquinoline quinone; PQQ)は、ニコチンアミド(ピリジンヌクレオチド)とフラビンに次ぐ3番目の酸化還元補酵素として細菌から見つかった有機分子です。PQQを含まない餌を与えたマウスは、成長が悪く、皮膚がもろくなり、また繁殖能力が減少するなどの異常を示し、哺乳類にとって重要な栄養素のひとつではないかと考えられてきました。しかし、生体内における生化学的な役割が不明のためにビタミンとして認識されることはありませんでした。
 私たちは、躁うつ病(双極性障害)に関わる遺伝子をクローニングする過程で、必須アミノ酸のひとつであるリジンの分解に関わる新しい遺伝子を見つけました。動物の体内でリジンはおもに、2-アミノアジピン酸 6-セミアルデヒド(AAS)に分解され、さらに2-アミノアジピン酸(AAA)に酸化されます。AASがAAAに酸化される反応を触媒するAAS脱水素酵素の遺伝子はこれまで見つかっていませんでした。今回、AAS脱水素酵素の遺伝子を見出したことがビタミンPQQの同定につながりました。

PQQを利用する酵素「AAS脱水素酵素」
 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ、AAS脱水素酵素の前半部分(N末端側)にはアミノ酸(基質)を捕捉するための構造があり、後半部分(C末端側)には「PQQ結合配列」が7つ連続して存在していました。 PQQ結合配列は、さまざまな細菌のPQQ依存性脱水素酵素に共通して見つかる構造です。細菌のPQQ依存性脱水素酵素においても6〜8回の連続したPQQ結合配列が必ず存在しており、この連続した構造によってPQQと結合していると考えられています。この特徴的な構造がマウスのAAS脱水素酵素に見つかったことから、AAS脱水素酵素は哺乳類において初めてPQQを利用する酵素ではないかと考えられました。その後の解析から、PQQ結合モチーフを持つAAS脱水素酵素の遺伝子は、ヒトを初めとする哺乳類だけではなく、その他の脊椎動物、無脊椎動物(昆虫のハエ)、さらにはイネなどの高等植物にも広く存在していることがわかりました。
 ⇒ 補酵素(Coenzymes)

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]