Subject   : ニトロゲナーゼと窒素固定

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 ニトロゲナーゼと窒素固定
地中には、分子状窒素(N2)を同化(固定)する能力を有する細菌(窒素固定細菌)が、生育している。    窒素固定細菌(Clostridium pasteurianum)は、窒素と水素からアンモニア(NH3)を合成する酵素ニトロゲナーゼを有している。  N2+3H2→2NH3   僣=−21.8kcal(−91.2kJ)

■ ニトロゲナーゼ
 ニトロゲナーゼは、アゾフェレドキシンとモリブドフェレドキシンの2種類の蛋白から構成されていて、エネルギー源としてATP、水素源として還元型フェレドキシンを必要とする。
 ニトロゲナーゼは、酸素感受性が高く、酸素により活性が不可逆的に阻害されるので、窒素固定細菌は、呼吸系や形態を変化させ、酸素によりニトロゲナーゼの活性の失活を防いでいる。
 ニトロゲナーゼは、ADPによっても失活する(不活化される)。

 窒素分子(N2)は、三重結合を有していて、化学的に安定な分子なので、活性化には高エネルギーを要する。  窒素固定は、原核生物(偏性嫌気性菌、好気性菌、光合成菌)だけで行われる。

 ニトロゲナーゼの酵素活性は、酸素により不可逆的に不活性化される(酸素に対する感受性が高い)。従って、窒素固定は、偏性嫌気性反応である。  嫌気性菌や光合成菌はニトロゲナーゼ系を酸素に触れないように保持出来るが、好気性菌や青緑色菌は保持に問題が生じる。
 好気性菌(Azotobacter vinelandiiやMycobacterium flavum)は、酸素分圧を大気圧より低くすると、窒素固定能が上昇する。Azotobacter 属では、呼吸調節(呼吸系変化)や分子構造変化(形態変化)により、ニトロゲナーゼを酸素による不活化から保護している。

■ 根粒菌(根瘤バクテリアRhizobium)
 根粒菌が、豆科植物の根毛に感染すると、根の4倍体細胞が分裂し、根粒(根瘤)が形成される。
 根粒菌は、根粒の中で増殖・膨張し、不規則な形状のバクテロイド(bacteroid)に変形する。

 バクテロイドは、土壌中の窒素をアンモニアに還元し、アンモニアは植物細胞質中のグルタミン合成酵素によりグルタミン酸と反応しグルタミンが生成され、グルタミンのアミド基がアスパラギン酸に転移されてアスパラギンが生成され、アスパラギンは根の輸送系により根粒内から植物内に輸送される。

 ⇒ アミノ酸

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