Subject   : 肝臓の類洞

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 肝臓の類洞
 肝臓では、門脈と動脈を流れて来た血液が、網目状の類洞(sinusoid:体循環の毛細血管に相当する)で混合され、肝静脈に流れ出る。肝臓は、門脈の終末(終末門脈枝)と、肝動脈の終末が、類洞(sinusoid)を形成し、中心静脈(終末肝静脈)に流入する。  体循環の毛細血管系のように、類洞は、肝臓の微小循環系として、肝細胞との種々の物質交換(栄養素、アンモニアなど)に、関与している。  毛細血管の内径は、ほほ一様で、約10μmなのに対して、類洞の内径は、不規則で、5〜30μm(時に、40〜50μm)。  肝臓の類洞壁を構成する肝類洞壁細胞には、クッパー細胞、類洞内皮細胞、肝星細胞、Pit細胞の4種類が存在する。

● 類洞内皮細胞(sinusoidal endothelial cell)
 類洞内皮細胞は、類洞に沿って扁平な形状で存在する細胞で、類洞壁を形成する。類洞内皮細胞は、一般の毛細血管内皮細胞と異なり、基底膜を有していない。類洞内皮細胞と肝細胞の間には、Disse腔(Disse space)が存在する。Disse腔では、類洞を流れて来た血液と、肝細胞との間で、種々の物質交換が行われる。肝硬変になると、類洞内皮細胞下に基底膜が出現し、類洞内皮細胞小孔が減少する。

● クッパー細胞(Kupffer's cell)
 クッパー細胞は、類洞腔内に、類洞内皮細胞に接着して、存在する。クッパー細胞は、骨髄由来で肝臓に遊走したマクロファージで、貪食能や抗原提示細胞機能を有する。クッペル星細胞とも呼ばれた。

● 伊東細胞(Itoh cell)
 伊東細胞は、一般には、肝星細胞(hepatic stellate cell)と呼ばれる。伊東細胞は、脂肪貯蔵細胞(fat-storing cell)、リポサイトとも呼ばれる。伊東細胞は、Disse腔(類洞外の、類洞内皮細胞と肝細胞との間の空間)に、存在する。  伊東細胞は、肝線維芽細胞系の細胞であり、筋線維芽細胞へ分化し、膠原線維(コラーゲン)を産生する。  伊東細胞は、肝線維化、更に、肝硬変を来たす。  伊東細胞は、ビタミンA貯蔵細胞でもあり、ビタミンAを、レチノールエステルとして、貯蔵する(ビタミンAを含んだ脂肪滴を含んでいる)。  伊東細胞は、類洞の血流調節にも、関与している。  伊東細胞(肝星細胞)には、脂溶性のビタミンAを含んだ脂肪滴が、多量に貯蔵されている。  慢性肝疾患では、ビタミンAを含んだ脂肪滴が消失し、それに伴ない、肝星細胞が活性化し、肝線維化が進展し、肝細胞癌が発生する。  食品中のビタミンA(レチノール)は、小腸で吸収され、門脈を経て、肝臓に輸送され、肝臓の肝細胞で、レチナールを経て、レチノイン酸に変換される。レチノイン酸は、核内に移行し、レチノイン酸受容体(レチノイン酸レセプター:RAR)に結合する。レチノイン酸受容体の機能を消失したマウスでは、細胞内の代謝が変化し、ミトコンドリアでの脂肪酸β-酸化(脂肪酸分解)に関与する、CPTII、VLCAD、LCAD、HCDの酵素発現量が低下する。他方で、ペルオキシソームでの脂肪酸β-酸化の律速酵素である、AOXやBFEの酵素発現量が増加する。このように、レチノイン酸受容体の機能を消失したマウスでは、ミトコンドリアでの長鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸(MCT)のβ-酸化が減少し、ペルオキシソームでの極長鎖脂肪酸のβ-酸化が増加する。

●  ピット細胞(Pit cell)
 ピット細胞は、NK細胞と考えられ、類洞腔内に、存在する。

 ⇒ アミノ酸

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