Subject   : 核酸のキャップ

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 核酸のキャップ
 真核生物のmRNAの5'末端に特徴的なキャップ構造。核酸の重合は通常5'→3'で結合が進むが、mRNAの5'末端は修飾反応によりグアノシンが5'-5'結合となっている。mRNAの5'末端を保護するためや、翻訳開始因子とmRNAの結合に関わっている。

伝令RNAはというと、まずあげておくべきは5プライム末端のキャップ構造でしょうか。ここで活躍する核酸塩基は7位窒素原子に対するメチル化グアニンです。RNAの一端にこの特殊構造があるおかげで、RNAは細胞内で分解をまぬがれ、翻訳の開始に必要な因子が認識しリボソームによるペプチド合成が可能になります。トリリン酸結合を介して、さかさまにひっくりかえってメチル化グアニンがくっついている点もユニークです。

原核生物と真核生物のmRNAの5’末端の構造を比較する。原核生物では、RNAポリメラーゼによって合成されたRNAはそのままmRNAとして機能し、翻訳に使われる。したがって、mRNAの5’末端には基質となったNTP(ヌクレオシド三リン酸)の3つのリン酸基がそのまま残っている。それに対して真核生物のmRNAの5’末端には、キャップ構造として7-メチルグアノシンが付加されている。

最初は原核生物と同様にRNAが合成されるため、5’末端には3つのリン酸基が残っている。そこで、RNAポリメラーゼIIによりRNAが約25ヌクレオチド合成されると、リン酸化CTDに結合していたキャッピング酵素が5’キャップ構造の形成を始める。まずホスファターゼ(脱リン酸化酵素)が作用して、末端のリン酸基を1個除去する。次にグアニル酸転移酵素が作用して、グアノシン三リン酸から二リン酸を切り取り、残ったグアノシン一リン酸をRNAの末端に付加する。通常のRNA合成では、RNAの3’末端にあるリボースの3’-OH基にヌクレオチドの5’-リン酸が付加されるが、キャップ形成のときはRNAの5’末端のリン酸基にグアノシン一リン酸のリン酸基が付加されるため、この部分ではリボースの5’と5’が三リン酸を介して向き合うことになる。そして最後に、メチル基転移酵素が付加されたグアニンの7位にメチル基を付加する。こうしてできた5’キャップ構造は『キャップ0』とよばれ、単細胞真核生物では、これが主要なキャップ構造になる。一方多細胞生物では、1番目のヌクレオチドのリボースにある2’-OHがメチル化されて『キャップ1』となったものが主になる。さらに、2番目のヌクレオチドでも2’-O-メチル化された『キャップ2』も存在する。

このキャップ構造は、mRNAの安定性にも影響するが、翻訳の開始でも重要な役割を果たします。

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