Subject   : SAR(散乱)

カテゴリー  : 産業・技術 


 SAR(散乱)
 電磁波が媒質に入射したとき、その進行方向が乱れる現象。散乱により、電磁波の進行方向が入射方向に対して変化した角度を散乱角(scattering angle)という。散乱角が±90゜以下の散乱を前方散乱、±90゜以上の散乱を後方散乱という。

 SARは衛星や航空機等の飛翔体に搭載され、側方から地表に向けてマイクロ波を照射し、地表で散乱された波のうち、その飛翔体に戻ってきたマイクロ波(後方散乱波の一部)を受信し、画像再生処理により、高い解像度(分解能)の画像を得ることができる映像レーダである。

 電磁波が均一な2種類の媒質の境界面に入射したとき、その境界面でのみ散乱が生じる場合を表面散乱という。水面によるマイクロ波の散乱は表面散乱である。表面散乱の強さは媒質の表面の複素誘電率が大きいほど強い。散乱角特性は、使用する電磁波の波長と観測する物体の表面(媒質の境界面)の粗さとの相対関係に依存する。 滑らかな表面における電磁波の散乱は、入射波と反対の方向に大きな散乱成分を持つ。このような散乱を鏡面反射(specular reflection)というが、表面の粗さによって散乱特性は大きく異ってくる。

 一方、電磁波が媒質の境界面を通り片方の媒質から他方の媒質に入射したとき、媒質の内部で散乱が生じる場合を、体積散乱という。樹木、積雪、降雨によるマイクロ波の散乱は体積散乱である。体積散乱の強さは媒質の不連続性や不均一性の密度が大きいほど強く、散乱角特性は媒質の不連続性とマイクロ波の波長との関係等に依存する。

 ○ 散乱計(scatterometer)
 後方散乱係数あるいは後方散乱断面積を測定するレーダの一種で、マイクロ波散乱計ともいう。この用語は2通りに使われる。
 広義には、後方散乱係数測定装置全般を指し、実験室レベルで使うもの、野外用、航空機用など多様であり、CW方式、FM-CW方式が広く用いられる。
 狭義には衛星などに搭載し、海上風の風向風速を二次元的に、また降雨強度を三次元的に観測するセンサなどを指し、前者の例としてSEASAT、 (E)ERS-1、ADEOS、後者の例としてTRMM搭載の散乱計がある。
 ⇒ 合成開口レーダ(SAR)
 ⇒ 人工衛星(Artificial Satellite)

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