Subject   : 地球シミュレータ(Earth Simulator)

カテゴリー  : 産業・技術 > 


 地球シミュレータ(Earth Simulator)
 NEC製のSX-9/Eをベースマシンとしたスーパーコンピュータである。 8個のCPUでメモリを共有する計算ノード160台(1280CPU)を2段のクロスバースイッチで結合した構成となっている。 神奈川県横浜市金沢区の海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 横浜研究所に設置されている。

地球規模の環境変動の解明・予測、さらにバブル崩壊により著しく落ち込んでいた日本のHPCリテラシー維持を目的として、科学技術庁(1998年度当時)が600億円を投じて開発を開始し、2002年3月15日に運用を開始した。計算科学の有効性を世界に示すとともに、地球温暖化や地殻変動など、文字通り地球規模でのシミュレーションに利用され、気候変動に関する政府間パネルの2007年ノーベル平和賞受賞にも大きく貢献した。2009年3月に新システムへの更新を完了し、4月から本格運用を開始している。公募により、地球科学、先進・創出分野での共同利用が行われている他、2007年からは産業界による成果専有型の有償利用も可能となっている。

102.4GFLOPSの性能を持つCPU8個と128GBのメモリを持つベクトル計算機ノード(地球シミュレータではPNと呼ばれる)160台を2段のクロスバースイッチでファットツリー状に接続し、最大理論性能131TFLOPSを実現している。

なお、SX-5をベースとした旧システムでは、1ノードは8GFLOPSのCPU8個、16GBのメモリからなり、640ノード(5120CPU)を単段クロスバースイッチで接続、最大理論性能は40.96TFLOPSであった。旧システムのCPUチップはスカラープロセッサ、ベクトルプロセッサ数十チップからなるSX-5を1チップLSI化したもので、SX-6は地球シミュレータをベースに開発された。

OSはNECのSUPER-UXを独自拡張したものであり、高級言語としてはFORTRAN90・C/C++が利用できる(いずれも地球シミュレータ用のコンパイラが用意されている)。並列化にあたっては、「ハイブリッド並列化」と「フラット並列化」の二つのプログラミングモデルがある。前者はノード間並列化をHPF (High Performance Fortran)/MPI、ノード内並列をマイクロタスクまたはOpenMPで記述する一方、後者はノード間・ノード内の両方の並列化をいずれもHPF/MPIで書く。一般的には前者はパフォーマンス重視、後者はプログラミング効率重視のモデルとされている。ユーザはこれらの並列化に対応したプログラムをバッチジョブとして投入する。名前が与えるイメージとは裏腹に、GRAPEのような問題特化型ではなくあくまで汎用計算機であるので、地球科学とは直接にかかわりのない分子動力学計算などにも利用されている[1]。

2002年6月にLINPACKベンチマークで実効性能35.86TFLOPSを記録し、スーパーコンピュータの計算性能の世界ランキングとして定評のあるTOP500で第2位の IBM ASCI White に5倍の差をつけてトップを獲得して[2]以来、2004年11月に IBM Blue Gene に首位を明け渡す[3]まで、5期連続でトップを維持した。これは全640ノードの内638ノード(5,104プロセッサ)を用いて得られたもので、ピーク性能に対する実測性能比は87.2%となる。ASCI Whiteが7.226TFLOPS(ピーク性能12.288TFLOPS:ピーク性能比58.8%)であったのと比較して、理論ピーク性能に対する実効性能の比が非常に高く、ベクトル計算機特有の高速メモリシステムおよび単段クロスバーネットワーク接続[4]によるものと分析された。

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