Subject  : 視床下部の睡眠・覚醒の調節

カテゴリー: 医学 


 視床下部の睡眠・覚醒の調節
 視床下部が睡眠・覚醒を司っていることは古くから知られており、嗜眠性脳炎の研究などから視床下部の前方部には睡眠中枢が、後方部には覚醒中枢が存在することが提起された。視床下部前方部に存在する腹外側視索前野(Ventrolateral preoptic nucleus: VLPO)におけるGABA作動性ニューロンが睡眠中枢として中心的な役割を果たしており、腹外側視索前野の神経細胞は睡眠時に活動を増加させることで睡眠の開始と維持を行っている。一方、視床下部後方部に存在する結節乳頭体核(Tuberomammillary nucleus: TMN)はヒスタミン作動性ニューロンの起始核であり、覚醒中枢の一つと考えられている。ヒスタミン作動性ニューロンはここから脳内のほとんどの領域に軸索を投射しており、ヒスタミン作動性ニューロンの活動が高まると覚醒レベルが上昇する。腹外側視索前野と結節乳頭体核は互いに軸索を投射してその活動を抑制し合っており、結節乳頭体核から腹外側視索前野への抑制が優位になると覚醒が、腹外側視索前野から結節乳頭体核への抑制が優位になると睡眠が開始されることで迅速な睡眠・覚醒の相転移が行われている(フリップ・フロップ説)。視床下部のオレキシンニューロンは、結節乳頭体核などの覚醒中枢に密に投射し、これを活性化させることで覚醒を維持するのに寄与していると考えられている。睡眠には視床下部以外にも脳幹のモノアミン作動性ニューロンなど関与する脳領域は多い。

<出典:脳科学辞典>
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