Subject   : 墨

カテゴリー  : その他  


 墨
 墨は、「煤(すす)」と「膠(にかわ)」を原料としてつくられます。

炭素粒子の大きさはコロイド次元です。コロイド粒子というのは、粒子の直径が10−9 〜10−7 m程度の微粒子のことで、墨の場合、この程度の大きさのコロイド状炭素が水に分散したものです。もう少し大きい粒子も含まれるかもしれません。ペリカンさんには少し難しいかもしれませんが、このようなコロイドを分散コロイドといいます。そして、炭素粒子は本来水に溶けませんが、コロイドの大きさになった炭素粒子は安定に水に「溶けている」ように振る舞います。しかし、もともと水に溶けないものです(水との仲が悪い)から、このようなものを疎水コロイドともいいます。したがって、時間が経つにつれて粒子が大きくなってしまい、墨としての役割を果たさなくなります。そこで膠(にかわ)を加えてあるのですね。膠はゼラチンという水に溶けやすいタンパク質を主成分としています。にかわを加えると、コロイド状炭素粒子の表面にタンパク質が吸着、安定に水のなかで存在できるようになります。にかわのタンパク質分子自身もコロイドの大きさですから、このような役割をするものを保護コロイドと呼びます。

 さて、問題は墨汁はろ紙を通るかどうかです。じつは基本的にろ紙はコロイド粒子を通すのです。したがって、墨汁だけをろ紙でろ過すると、ろ液は無色透明にはならないはずです。やはり黒いろ液が得られます。  墨汁の方は、墨のつぶつぶが水の中を漂っています。この粒の大きさは、人の目では見えないほど小さいのですが、原子やイオンに比べるとはるかに大きいのです

 ところが墨汁に食塩を加えると、にかわ(タンパク質)の保護膜が役割を果たさなくなるのです。それで炭素の粒子がたくさん集まってしまいます。これをコロイドの凝析といいます。つまりろ紙を通れない大きさの粒子になってしまいますから、ろ紙上に残ってしまい、「黒い粘土のようなものになる」というわけです。

● 墨の種類
墨の主な原料である煤の違いによって、松煙墨と油煙墨に分かれる。朱墨、青墨、紫墨、茶墨などの表現があるが、朱墨以外は基本的に黒色で、色調の傾向を示す言葉である。朱墨の原料は、鉱産物として天然に採掘される辰砂である。
 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]