Subject  : 水疱のできる病気

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 水疱のできる病気
水疱(すいほう)とは、死んだ皮膚でできた非常に薄い膜の下に、液体がたまってできるふくらみです。この液体は、損傷を受けた組織からにじみ出てきた水分とタンパク質が混ざったものです。水疱は、やけどや炎症などの外傷を皮膚が受けるとその反応として生じます。普通は表皮(皮膚の最も外側の層)だけにできます。このような水疱は治りが早く、傷あとも残りません。全身性疾患の一部としてできる水疱は、皮膚の深い層から生じて広い面積にできることがあります。このような水疱は治りが遅く、あとが残る場合があります。
水疱の原因となる病気や外傷はたくさんありますが、中でも3つの自己免疫疾患、天疱瘡(てんぽうそう)、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎は、最も症状が重い病気です。

 ● 天疱瘡(尋常性天疱瘡)
天疱瘡は中年層や高齢者に最も多くみられる病気です。 健康な皮膚面に突然大きな弛緩(しかん)性の水疱(すいほう)が発生してくるもので、しだいに全身にひろがっていきます。 子供にはほとんどできません。この病気では、免疫システムが、表皮細胞(皮膚の最も外側の層を構成する細胞)を互いにつないでいる特異的なタンパク質を攻撃する抗体をつくります。細胞間のつながりが破壊されると、表皮細胞は皮膚の下層から分離していき、水疱が形成されます。

 【症状】
透明で軟らかく、痛みを伴うさまざまさまざまな大きさの水疱が、口の内側、性器、その他の粘膜に急にたくさんできます。
皮膚を軽くつまんだりこすったりしただけで、皮膚の最も外側の層が下の層と分離して、大きくむけてしまいます。 水疱はしばしば口の中に最初にできてそれがすぐ破け、痛みを伴う潰瘍になります(びらん)。その後は水疱と潰瘍が口の中いっぱいに次々とでき、ものを飲みこむのが難しくなります。水疱は皮膚の上にもできます。こちらの水疱もやがて破れて、放置しておくと痛みを伴う硬い傷になります。患者は体全体が不快に感じます。水疱は広がることがあり、これらがいったん破けると感染症にもつながります。天疱瘡は重症の場合、重度のやけどと同じくらい危険です。やけどと同様、天疱瘡で損傷を受けた皮膚からは大量の体液がにじみ出て、いろいろな細菌に感染しやすい状態になります。

 【治療法】
治療の柱は、ステロイド薬の高用量投与です。病状が管理できるようになったら、ステロイドの量を徐々に減らします。治療の効果がみられない、あるいはステロイド薬の量を減らしたら症状が再燃したという場合は、免疫抑制薬であるアザチオプリンやシクロホスファミドも投与します。重症の天疱瘡の場合、抗体を血液からろ過するプラスマフェレーシスを行うことがあります。
金塩の注射を行う場合もあります。免疫グロブリンを静脈注射する手法は、重症の天疱瘡の新しい治療法で、安全で効果も期待できます。薬を中止できるくらい良くなる場合もあれば、長期間にわたって低用量の薬を使い続けなくてはならない場合もあります。
水疱が破裂して感染症が起きている場合、抗生物質を使う必要があります。皮膚がむけて体液がにじんでいる部分には、ワセリンをしみこませたドレッシング材をかぶせて保護します。

 ● 水疱性類天疱瘡
水疱性類天疱瘡では皮膚に大きくてぴんと張った、とてもかゆい水疱ができます。その水疱の回りの皮膚は赤くなり、炎症を起こしています。水疱は口の中にできることは少なく、また、程度も重くはありません。水疱ができていない部分の皮膚は正常に見えます。
水疱性類天疱瘡は、その特徴的な水疱からすぐに診断できます。しかし、天疱瘡やウルシ科の植物によるかぶれなど、水疱ができる他の病気と区別がつきにくいことがあるので、確定診断のためには皮膚のサンプルを顕微鏡で調べます(皮膚生検)。水疱性類天疱瘡と天疱瘡の区別をつけるには、症状が皮膚のどの層にまで及んでいるかと、特徴的な抗体沈着物を調べます。

ステロイド薬の高用量投与をすると効果がみられます。ステロイド薬の投与量は数週間後から徐々に減らしていきます。アザチオプリン、シクロホスファミドを投与する場合もあります。免疫グロブリンを静脈注射する方法は、安全で有望な新治療法です。

 ● 疱疹状皮膚炎
強いかゆみを伴う小水疱のかたまりと、じんま疹のような腫れが生じます。 (ひじ、膝、尻、腰、後頭部、顔や首)

病名は「疱疹(ヘルペス)状」ですが、この病気はヘルペスウイルスとは関係ありません。疱疹状皮膚炎では、小麦、ライ麦、大麦やそれらから作られた製品に含まれるグルテン(タンパク質の1種)によって体内の免疫システムが活性化され、皮膚が攻撃を受けるために発疹やかゆみが生じます。疱疹状皮膚炎にかかった人は、グルテンに対する過敏性が原因で起こるセリアック病を発症することがあります。これらの人々は、その他の自己免疫疾患、具体的には甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、糖尿病などの発生率も高くなります。疱疹状皮膚炎の患者は、腸にリンパ腫ができることもあります。

ダプソンという薬を経口で服用すると、ほとんどの場合1〜2日で症状が改善されますが、これを服用する場合は血球数を定期的に測る必要があります。薬の服用と、グルテンを摂取しないようにする厳密な食事制限(小麦、ライ麦、大麦をいっさい摂取しない)を6カ月以上続けて症状がコントロールできるようになったら、薬は中止しても大丈夫です。しかし、一部には薬の服用をずっと続ける必要がある人もいます。また、ほとんどの人は、たとえ少量でもグルテンを摂取すると症状が再発します。
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