Subject  : 破傷風

カテゴリー: 健康・医療情報 


 破傷風
破傷風は嫌気性細菌の破傷風菌がつくる毒素によって激しい筋肉のけいれんが起こる病気です。 日本では発症はほとんどありませんが、世界中で5万人もの人が破傷風で亡くなっています。

破傷風菌の芽胞は動物の糞(ふん)や土の中で何年も生きることができます。この芽胞が傷口を通して人体に入ると増殖を始めます。病気を起こすのは破傷風菌自体ではなくて、増殖中の破傷風菌がつくり出す毒素です。 破傷風は、さびたり汚れている物体によって受けた切り傷や、くぎを踏んでしまったために受けた深い刺し傷などから起こりますが、清潔な浅い傷からでも起こることがあります。出産後に、母親の子宮や新生児のへその緒が感染することもあり、破傷風感染症は開発途上国では脅威となっています。

 【症状と診断】
通常、症状は感染の5〜10日後に現れますが、早ければ2日後、遅ければ50日後までは発症の可能性があります。最もよくみられる症状はあごのこわばりで、口が開きにくくなります(開口障害)。そのほか、落ち着きがなくなる(不穏)、ものを飲みこみにくくなる、刺激過敏になるなどの症状や、頭痛、発熱、のどの痛み、悪寒、筋肉のけいれん、首、腕、脚のこわばりが起こります。病気が進むと、あごが開けにくくなる開口障害が強くなり、顔の筋肉がけいれんするためまゆがつり上がり、引きつって笑っているような表情になります。さらに、腹部、首、背中の筋肉がけいれんし、頭とかかとが後につり、胴体が前に出て体全体が弓なりに反る「反弓緊張」という姿勢がみられるようになります。括約筋もけいれんし、便秘が起こり、尿が出なくなります。
物音、すき間風、ベッドのきしみといったようなささいな刺激が引き金となって、強い痛みを伴った筋肉のけいれんと多量の発汗が起こります。全身けいれんが起こっている間は、胸筋が硬直し、のどもけいれんするので、叫んだり、声を出したりすることさえできなくなります。この状態では呼吸も十分にできなくなり、酸素欠乏や致死的な窒息につながります。 傷の近くの筋肉だけにけいれんが起こる場合もあります。このように破傷風の症状が限局している場合は、症状が何週間にもわたって続くことがあります。

けがをした後で筋肉のこわばりやけいれんがみられた場合は、破傷風が疑われます。破傷風菌は傷口から綿棒で採取したサンプルで培養できますが、結果が陰性でも、必ずしも菌がいないとはいい切れません。

 【予防】
破傷風はいったんかかってから治療するより、予防することの方がはるかに効果的です。一連の初回接種(注射を3回以上)を受けておけば、破傷風になることはまずありません。破傷風ワクチンは、体に細菌自体を攻撃させるのではく、細菌が出す毒素を中和する力を高めます。小児には、ジフテリア、百日ぜき、破傷風の3種混合ワクチンで接種されます。一連の初回接種を済ませた成人は、10年に1回追加接種を受ける必要があります。
けがをした人に対する予防接種の方法は複雑です。一般に、一連の初回接種を済ませている場合は、過去5年以内に追加接種を受けていれば接種の必要はありません。一連の初回接種を完了してない場合や、追加接種を受けてから10年以上たっている場合は、追加接種に加えて、破傷風免疫グロブリンも必要となります。
そのほか、汚れたり死んでいる組織は破傷風菌の増殖を促すので、傷口、特に深い刺し傷をすみやかに徹底的に洗浄することも予防対策になります。異物や損傷した組織は、必要があれば外科的に取り除きます。

 【治療】
破傷風の症状が現れたら、入院させて静かな部屋で安静を保ちます。メトロニダゾール、ペニシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を投与して細菌を殺し、毒素が増えるのを抑えますが、すでにつくられた毒素に対しては、抗生物質は効力がありません。毒素の中和には破傷風免疫グロブリンを使います。そのほか、鎮静、筋肉の弛緩(しかん)、痛みの緩和、けいれんの抑制、心拍数や血圧のコントロールに役立つ薬剤を使います。
中度から重度の感染症では、呼吸を補助するために人工呼吸器が必要となります。破傷風になると食べものを飲みこむのが難しくなるので、栄養剤を点滴静注したり、鼻から胃へチューブを通して補給します。
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