Subject  : 狂犬病

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 狂犬病
狂犬病は、動物によって媒介されるウイルス感染症で、脳や脊髄に炎症を起こします

狂犬病は、最も一般的な感染源であるイヌと同様に、ネコ、コウモリ、アライグマ、スカンク、キツネなど、多くのさまざまな動物から人へ伝染します。狂犬病がマウス、ラット、ハムスター、リスなどのげっ歯類や、ウサギ、野ウサギに伝染することはまれです。ウイルスは無傷な皮膚を通過できないため、かまれた傷口や皮膚の裂け目から体内に侵入しますが、コウモリでは、かまれた跡がなくても感染した例があります。
ウイルスは体内に入ると神経に沿って脊髄まで進み、さらに脳へ移動して、そこで増殖します。脳からは、別の神経に沿って唾液腺へ、さらに唾液中へと移動していきます。
通常、狂犬病ではウイルスが脊髄や脳に達すると死に至りますが、それまでに少なくとも10日を要します。かまれた部位によっては脳に到達するまで30〜50日かかります。この期間中にウイルスを根絶できれば死を免れます。

狂犬病に、狂暴型と麻痺型があります。狂暴型狂犬病に感染した動物は興奮して暴れますが、やがて麻痺が起きて死亡します。麻痺型狂犬病に感染した動物は、最初から体の一部または全身に麻痺が起こります。ただし野生動物の場合は、狂暴型狂犬病に感染していても狂暴には見えませんが、夜行性動物が日中に姿を現したり、人を見ても恐れないようになります。

 【症状と診断】
 狂犬病ウイルスが脳や脊髄に到達すると、症状が現れますが、通常はかまれてから30〜50日後のことです。しかし、この潜伏期間は10日から1年以上の幅があります。かまれた場所が脳に近いほど、症状は早く現れます。
狂犬病は、一般的に短期間のうつ状態、落ちつきのなさ、全身の不調(けん怠感)、発熱などで始まります。しかし患者の20%は下肢の麻痺で始まり、それが次第に全身に広がっていきます。次第にひどく落ち着かなくなって興奮を抑えることができなくなり、唾液量が異常に増えます。狂犬病は嚥下と呼吸を調整する脳の領域を侵すために、のどや声帯の筋肉がけいれんします。このけいれんは耐えがたいほどの痛みを与えます。微風にあたったり、水を飲もうとしたりしただけでもけいれんが誘発されるため、患者は水を飲むこともできません。このため狂犬病は恐水病と呼ばれることもあります。
感染が脳へ波及すると、ますます錯乱が進んで非常に興奮します。最後は昏睡状態に陥り死亡します。死因は、気道閉塞、けいれん発作、消耗、広範囲の麻痺です。

狂犬病ウイルスに感染したかどうかは、かまれた直後では検査を行っても判明しません。
動物にかまれた後に、錯乱、興奮、麻痺の症状が悪化していくときは、狂犬病だと診断されるでしょう。この時点で検査を行えば、狂犬病ウイルスを検出できます。皮膚生検によって、頸部の皮膚サンプルが採取されます。サンプルの顕微鏡検査が行われウイルスが検出されます。

 【予防法】
狂犬病ワクチン接種によって免疫ができるため、ほとんどの人がほぼ一生狂犬病にかからずにすみます。しかしワクチンの効果は時間がたつと弱まるため、感染リスクが高い人は、免疫を高めるために2年ごとの追加接種が必要です。
かまれた傷口はすぐに治療します。傷口をせっけんと水で十分に洗い流し、傷が深いときにはせっけん水で噴射洗浄します。ときには、傷口の縁の皮膚組織を少し切り取ることもあります。
狂犬病ワクチン接種による免疫がない人には、動物の状態によって、狂犬病免疫グロブリンの注射が行われます。
発症してしまってからでは、ワクチンも免疫グロブリンもウイルスに対して効果的ではありません。野生動物にむやみに近づくのは止めましょう。かまれないように注意しましょう。危険な動物を飼っている場合は、予防接種を必ず受けましょう。
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