Subject  : 急性リンパ球性白血病(ALL)

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 急性リンパ球性白血病(ALL)
急性リンパ球性白血病(ALL)は、正常ならリンパ球になる細胞ががん化して、急速に骨髄の正常細胞に取って代わる、命にかかわる病気です。

急性リンパ球性白血病(ALL)はあらゆる年齢層で発症しますが、小児のがんとして最も多く、15歳未満の小児がんの25%を占めます。2〜5歳の年少児に特に多くみられます。成人では65歳を超えるとやや多くなります。
急性リンパ球性白血病では、非常に未熟な白血球が骨髄に蓄積し、正常な細胞を産生する細胞を破壊して入れ代わります。白血病細胞は血流に乗って肝臓、脾臓、リンパ節、脳、精巣などに運ばれ、そこで成長と増殖を続けることもあります。また、脳と脊髄を包む膜を刺激して炎症を起こしたり(髄膜炎)、貧血、肝不全、腎不全やその他の臓器の障害を起こしたりします。

 【症状と診断】
初期の症状は、骨髄が正常な血球を十分に産生できないことが原因で生じます。白血球が減少することにより感染を起こし、発熱や多汗が生じます。赤血球が減少して貧血になり、脱力、疲労、蒼白(皮膚や粘膜が血色を失った状態)が現れます。血小板数が低下するため、あざや出血が生じやすくなり、鼻出血や歯ぐきからの出血がみられます。白血病細胞が脳で増殖すると、頭痛や嘔吐が起きたり、刺激に敏感になったりします。白血病細胞が骨髄で増殖すると、骨の痛みや関節痛が起こります。白血病細胞によって肝臓や脾臓が腫大すると、腹部膨満感や腹痛が生じることがあります。

全血球計算などの血液検査で、急性リンパ球性白血病かどうかがわかります。全白血球数は、減少している場合もあれば、正常、あるいは増加している場合もありますが、赤血球数と血小板数はほぼ必ず減少します。血液を顕微鏡で観察すると、非常に未熟な白血球(芽球)がみられます。たいていの場合、骨髄生検を行って診断を確定し、他のタイプの白血病と判別します

 【治療】
化学療法は効果が高い治療法で、いくつかの段階に分けて行われます。最初の治療(寛解導入療法)では、白血球を破壊して骨髄中で再び正常な細胞が成長できるようにすることで、寛解へと導きます。骨髄が回復する速さによって、数日から数週間の入院が必要です。貧血の治療と出血の予防用に血液と血小板を輸血し、感染の治療には抗生物質が必要になります。尿酸など、白血球が破壊されたときに放出される有害な物質を除去するため、輸液の点滴とアロプリノールによる薬物療法も行われます。
化学療法薬にはさまざまな組み合わせ方がありますが、そのうち1つを選び、数日から数週間にわたって投与を繰り返し行います。1例としては、プレドニゾロンを経口で投与し、週単位でビンクリスチンをアントラサイクリン系抗生物質(ダウノルビシンなど)、アスパラギナーゼ、ときにシクロホスファミドとともに静脈注射します。そのほかの薬剤についても研究が行われています。
髄膜(脳と脊髄を包む膜)中の白血病細胞に対しては、メトトレキサートかシトシンアラビノシド、あるいはその両者を脳脊髄液に直接注入します。この化学療法とともに、脳への放射線療法を行うこともあります。白血病は髄膜に広がる可能性が非常に高いことから、脳に広がっている形跡がほとんどなくても、通常は予防のために同様の治療を行います。
血液、骨髄、脳、精巣などに白血病細胞が再び現れることがあります(再発)。骨髄に再び現れた場合は特に深刻です。化学療法を再開すると、ほとんどの場合は効果が得られますが、この病気は再発する傾向が強く、2歳未満の乳幼児や、成人では特に再発が多くみられます。白血病細胞が脳に現れた場合は、週に1、2回、脳脊髄液に薬剤を注入します。白血病細胞が精巣に現れた場合は、化学療法とともに放射線療法を行います。 再発した場合は、高用量の化学療法と同種幹細胞移植を併用すると治癒する可能性が最も高くなりますが、この方法は組織のタイプ(HLA)が適合している人から幹細胞を得られる場合しか実施できません。ときには、HLAが部分的に適合する家族や他人から細胞の提供を受けたり、臍帯血の幹細胞を使用することもあります。
 ⇒ 血液の主な病気

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