Subject  : 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

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 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
 血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)は、1924年米国のEli Moschcowitzによって初めて報告された疾患で、歴史的には1)消耗性血小板減少、2)微小血管症性溶血性貧血、3)腎機能障害、4)発熱、5)動揺性精神神経障害の古典的5徴候で診断されていた。その後、1)2)のみの症例でも同様の病態であることが報告されてきたが、より最近ではADAMTS13活性著減(10%未満)のみがTTPと診断されるようになった。TTPの罹患年令は新生児から老人までと幅広く、日本国内では30〜50歳と60歳前後に発症ピークが認められる。罹患率は女性にやや多いが、30〜50歳では女性が明らかに多く、高齢になれば男性の比率が高まる。

 【病因・症状】
 ADAMTS13の基質であるフォンウィルブランド因子(von Willebrand factor:VWF)は、血管内皮細胞で超高分子量VWF多重体(UL-VWFM)として産生され、内皮細胞内に蓄積される。この後、一部は血管内皮下組織に分泌されマトリックスの構成成分となるが、残りの大部分は、様々な刺激によって内皮細胞から血中に放出される。この時、UL-VWFMはその特異的切断酵素ADAMTS13によって切断され小分子化し、止血に適した分子型となる。したがって、ADAMTS13活性が著減するとUL-VWFMが切断されず、血中に蓄積し、末梢細動脈等で生じる高ずり応力下に過剰な血小板凝集が引き起こされ、血栓を生じる。

先天性TTPであるアップショー・シュールマン症候群(Upshaw-Schulman症候群:USS)は、生後間もなく新生児重症黄疸で発症する典型的な症例があるが、学童期に繰り返す血小板減少で診断される症例や、成人期以降に習慣性流産などの妊娠時に発症するタイプもある。この発症年齢の差が何故なのかはいまだ不明である。しかし、最近になって小児期に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と誤って診断されている症例で、妊娠を契機にTTPを発症し、USSであると診断された例が多く報告されている。後天性TTPでは、体のだるさ、吐き気、筋肉痛などが先行し、発熱、貧血、出血(手足に紫斑)、精神神経症状、腎障害が起こる。発熱は38℃前後で、ときに40℃を超えることもあり、中等度ないし高度の貧血を認め、軽度の黄疸(皮膚等が黄色くなる。)を伴うこともある。精神神経症状として、頭痛、意識障害、錯乱、麻痺、失語、知覚障害、視力障害、痙攣などが認められる。血尿、蛋白尿を認め、まれに腎不全になる場合もある。

 【治療法】
 先天性TTP(USS):新鮮凍結血漿(FFP)を定期的に輸注してADAMTS13酵素補充を行い、血小板数を維持する治療が行われる。将来は、現在臨床治験が行なわれている遺伝子組換え蛋白(rADAMTS13)による酵素補充療法が可能となると思われる。 後天性TTP: ADAMTS13インヒビター(自己抗体)によってADAMTS13活性が著減しているので、FFPのみの投与では不十分で、治療は血漿交換(PE)療法が第一選択となる。この際、ステロイド又はステロイドパルス療法の併用が一般的である。

<出典:難病情報センター>
 ⇒ 血液の主な病気

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