Subject  : ミトコンドリア病(指定難病21)

カテゴリー: 健康・医療情報 


 ミトコンドリア病(指定難病21)
 ミトコンドリア病は、ミトコンドリア機能が障害され、臨床症状が出現する病態を総称している。ミトコンドリアはエネルギー産生に加えて、活性酸素産生、アポトーシス、カルシウムイオンの貯蔵、感染防御などにも関わっているため、ミトコンドリア病ではこれらの生物学的機能が変化している可能性がある。しかし、現在のところ、ミトコンドリア病における機能異常の主体はエネルギー産生低下と考えられており、そのエネルギー代謝障害による病態が基本である。

【原因】
 ミトコンドリア病の病因は、核DNA上の遺伝子の変異の場合とミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常の場合がある。核DNA上の遺伝子は、既に200近い遺伝子の変異が同定されている。 一方、環状のmtDNA上には、欠失/重複、点変異(質的変化)とともに、通常一細胞内に数千個存在しているmtDNAの量が減少しても(量的変化)病気の原因になる。既にmtDNA上に100個を超える病的点変異が同定されている。

【症状】
 代表的なミトコンドリア病の病型は、主に特徴的な中枢神経症状を基準に診断しているが、実際はこれらを合併して持つ症例や中枢神経症状がない症例も多数存在している。
代表的な臓器症状は、以下に示すようなものになるが、これらを組み合わせて持っている患者は、ミトコンドリア病が疑われ診断に至ることが多いが、単一の臓器症状しかみえない患者では、なかなか疑うことすら難しく、確定診断に至るまで時間を要することがまれでない。
主症状
@進行性の筋力低下、横紋筋融解症又は 外眼筋麻痺を認める。
A知的退行、記銘力障害、痙攣、精神症状、一過性麻痺、半盲、皮質盲、ミオクローヌス、ジストニア、小脳失調などの中枢神経症状のうち、1つ以上を認める。または、手足のしびれなどの末梢神経障害を認める。
B心伝導障害、心筋症などの心症状、肺高血圧症などの呼吸器症状、糸球体硬化症、腎尿細管機能異常などの腎症状、強度の貧血などの血液症状又は中等度以上の肝機能低下、凝固能低下などの肝症状を認める。
C低身長、甲状腺機能低下症などの内分泌症状や糖尿病を認める。
D強度視力低下、網膜色素変性などの眼症状、感音性難聴などの耳症状を認める。


〇 MELAS
 原因はミトコンドリアRNAの点変異である。症状を繰り返し、増悪していく特徴がある。母系遺伝により発症する。 好発年齢は5?15歳であるが、成人発症例もある。特徴的な症状としては脳卒中発作(頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害、片麻痺など)や糖尿病が見られる。その他、ミトコンドリア脳筋症の共通症状である知能低下、感音性難聴、筋力低下、易疲労性、低身長、心筋症などが見られる。検査所見としては、ミトコンドリア脳筋症に共通ではあるが、血中・髄液中の乳酸値、ピルビン酸値、乳酸/ピルビン酸比(L/P比)が上昇する。また筋生検で筋漿膜下に異常なミトコンドリアが多数蓄積している像が見られる。ミトコンドリアはGomoriトリクローム染色で赤く染まる。このような筋繊維である赤色ぼろ繊維(RRF)が見られる。

〇 MERRF
 ミトコンドリアRNAの点変異が原因である。好発年齢は小児?60歳(半数以上は小児期)である。ミトコンドリア脳筋症の共通症状に加えてミオクローヌス、けいれん、小脳失調が見られるときにMERRFを考える。

〇 CPEO
 ミトコンドリアDNAの一部欠失が原因である。母系遺伝ではなく、ほとんどが孤発例である。ミトコンドリア脳筋症の共通症状に加えて、眼瞼下垂、外眼筋麻痺、網膜色素変性症、心伝導障害があるときに、これを考える。特に、外眼筋麻痺、網膜色素変性症、心伝導障害の3徴を合併したものを、Kearns-Sayre症候群(KSS)という。
 ⇒ 泌尿器系の病気

[メニューへ戻る]  [カテゴリー一覧]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]