Subject  : 高免疫グロブリン療法

カテゴリー: 健康・医療情報 


 高免疫グロブリン療法
 高免疫グロブリン(Hyperimmune globulin)は、通常のヒト免疫グロブリンと同様の方法で調製される免疫グロブリンの一種であるが、ドナーの血漿中に特定の生物や抗原に対する高力価の抗体が含まれている事が特徴である。高免疫グロブリンが利用できる病原体には、B型肝炎、狂犬病、破傷風毒素、水痘・帯状疱疹などがある。高免疫グロブリンを投与する事で、患者はある病原体に対する「受動的」な免疫を得る事が出来る。これは、「能動的」な免疫を提供するワクチンとは対照的である。しかし、ワクチンはその目的を達成するのに時間が掛かるのに対し、高免疫グロブリンは瞬時に受動的な短命の免疫を齎す。高免疫グロブリンは重篤な副作用を伴う可能性があり、使用には充分な注意が必要である。

高免疫血清(Hyperimmune serum)とは、多量の抗体を含む血漿を指す。高免疫血清は、エボラウイルスに感染した患者に有効な治療法であるとの仮説が立てられている。

【作用機序】
 大量療法の作用機序には不明な点が多いがいくつかの仮説が存在する。
〇Fcγ受容体を介した機序
大量投与されたIgGのFc部分によってFcγ受容体が阻害されマクロファージの活性化が阻害される。
〇補体を介する機序
C3bといった補体成分とIgGが結合することでC5b-C9複合体の生成が減少する。
〇抗イディオタイプ抗体による自己抗体の制御
抗イディオタイプ抗体によって自己抗体が中和される。
〇炎症性サイトカインの制御
IL-1αやIL-6といった炎症性サイトカインに対する中和抗体が含まれている。
〇T細胞の制御
サイトカインバランスに働きかけて自己免疫性疾患を調節する。

【副作用】
 頻度の多い副作用としては肝機能障害、悪寒、発熱など認められ、稀であるが重大な副作用として過粘稠症候群、ショック、急速投与による肺水腫などが知られている。
皮下投与の場合、2日後に最高血中濃度に達するため、投与初期の一過性の局所発赤、腫脹以外の副作用は少ない。
頭痛、悪寒、筋肉痛、胸部苦悶感、全身倦怠感、悪心、発熱 点滴速度を遅くすることで対応。1?2日で消失する。
治療中または治療後 無菌性髄膜炎、皮疹(汗疱)、尿細管壊死、血栓塞栓症、低ナトリウム血症、顆粒球減少症 数日から1ヶ月ほど持続しその後消失
血栓塞栓症発生者のうち約半数は免疫グロブリン療法開始12時間以内に75%は24時間以内に起こっている。
髄液中に達した免疫グロブリンが髄膜の血管内皮に作用しサイトカインを介した炎症をおこすと推定されている。多くは投与開始48時間以内に起こる。(無菌性髄膜炎)

【適応禁忌】
 ヒト免疫グロブリン過敏症、IgA欠損症、重篤な肝不全、重篤な腎不全、血漿浸透圧が上昇する疾患、最近の深部静脈血栓症の既往などで禁忌となる。
IgA欠損症患者では免疫グロブリン製剤に含まれるIgAに対してアナフィラキシー反応を起こすことがある。ただしこの合併症は極めてまれである。
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