Subject  : 肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)

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 肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)
 肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇するのが肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)です。肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなるために、血液の流れが悪くなるからです。必要な酸素を体に送るためには、心臓から出る血液の量を一定以上に保つ必要があります。狭い細い血管の中に無理に血液を流すように心臓が努力するために、肺動脈の圧力(血圧)が上昇します。しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。

 【症状】
 自覚症状として「肺動脈性肺高血圧症」だけに特別なものはありません。この病気は肺の血管に異常が生じるため、心臓に多大な負担がかかり、結果として「全身への酸素供給がうまくいかなくなる病気」です。初期は、安静時の自覚症状はありません。しかし、体を動かす時に、ヒトはより多くの酸素が必要になります。この酸素の供給が十分にできなくなるのが、「肺動脈性肺高血圧症」であり、病気がある程度進行すると、それによる症状が出現します。すなわち、体を動かす時に息苦しく感じる、すぐに疲れる、体がだるい、意識がなくなる(失神)などの症状が現れます。病気が進むと、「心臓の機能がより低下」するために、足がむくむ、少し体を動かしただけでも息苦しいなどの症状が出現します。

 【治療法】
 肺の血管を拡げて血液の流れを改善させる「肺血管拡張療法」により、病気が完全に治るわけではありませんが、近年は有効な3系統の治療薬を組み合わせることによって、病気の進行を遅らすことができます。具体的には、肺血管を拡げるサイクリックAMPの増やす作用のある「プロスタサイクリンおよびその誘導体(PGI2)」、肺血管を収縮させるエンドセリンの作用を阻害する「エンドセリン受容体拮抗薬」、肺血管を拡げるサイクリックGMPを増やす作用のある「ホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬」と「可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬」になります。しかし、これらの薬をどのように服用すると最も効果があるのかは、専門医との相談が必要です。病気が進んでしまうと、薬の効果が乏しくなることがありますので、早めに専門医を受診することが必要です。  さらに補助的な治療法として、利尿薬(循環血漿量を減少させて、心臓の負担を減らす)、 酸素療法 (心臓の機能が低下して全身への酸素供給能力が低下しているので、吸入酸素濃度を上昇させてそれを補う)が、必要に応じて使用されています。内科治療を十分行っても病状が悪化する場合、肺移植が適応となります。本邦における肺高血圧症患者の肺移植待機期間はおよそ2年半ですので、積極的な治療を行っても病状が悪化する場合は早めの肺移植登録が必要となります。

<出典:難病情報センター>
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