Subject  : リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)

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 リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)
 リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は、平滑筋様の腫瘍細胞(LAM細胞)が増殖し、肺に多発性嚢胞を形成する、緩徐進行性かつ全身性の腫瘍性疾患である。結節性硬化症(TSC)に伴って発生するTSC-LAMと、単独で発生する孤発性LAMとに分類される。主として妊娠可能年齢の女性に発症し、進行に伴って労作時呼吸困難、咳嗽、血痰、乳び胸水などの症状や所見が出現し、自然気胸を反復することが多い。腎臓などに血管筋脂肪腫を合併することがある。肺病変が進行すると呼吸機能が低下し呼吸不全を呈するが、進行の速さは症例ごとに多様である。

 【原因】
 孤発性LAM、TSC-LAMともにTSCの原因遺伝子として同定されたTSC遺伝子の異常が発症に関与している。TSCは全身の臓器に種々の過誤腫を形成する遺伝性疾患であり、原因遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。TSC遺伝子異常により形質転換したLAM細胞は、病理形態学的には癌と言える程の悪性度は示さないがリンパ節や肺に転移し、肺にはびまん性、不連続性の病変を形成する。また、LAM細胞はリンパ管内皮細胞増殖因子であるVEGF-CおよびVEGF-Dを強く発現し、LAM病変内には、豊富なリンパ管新生を伴っており、LAM病変の進展や転移にリンパ管新生が中心的役割を担っている可能性が考えられている。

 【症状】
 主に妊娠可能年齢の女性に発症し、平均発症年齢は30歳台中頃であるが、閉経後に診断されることもある。男性では、孤発性LAMは極めてまれである。肺病変の進行に伴い労作時呼吸困難が出現することにより、又は自然気胸を契機として、診断される場合が多いほか、無症状のまま胸部検診での異常影として発見される場合がある。その他の症状として咳嗽、血痰、喘鳴などの呼吸器症状や、乳び胸水又は腹水、下肢のリンパ浮腫、腹部腫瘤(リンパ脈管筋腫)、腎血管筋脂肪腫に伴う症状(腹痛、血尿、貧血など)を認める場合がある。

 【治療法】
 閉塞性換気障害を認める症例では気管支拡張薬が症状改善に有用であり、作用機序の異なる薬剤を単独あるいは併用して投与する。本症の発症と進行には女性ホルモンの関与が推測されるため、ホルモン療法が考慮されてきたが、効果に関して一定の見解は得られていない。近年、分子標的治療薬の一種でありmTOR阻害薬であるシロリムスの有効性が報告され、本邦において2014年7月に薬事承認された。シロリムスは、肺機能の低下を防止する、乳び胸水や腹水を減少させる、腎血管筋脂肪腫を縮小する、等の効果が報告されている。 LAMでは気胸の再発が多くみられるため、早期に胸膜癒着術や外科的治療を行い、再発防止策を講じる必要がある

<出典:難病情報センター>
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