Subject  : 網膜色素変性症(指定難病90)

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 網膜色素変性症(指定難病90)
 網膜色素変性症は視細胞という細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して光の刺激を神経の刺激すなわち電気信号に変える働きを担当しています。視細胞には、大きく分けて2つの種類の細胞があります。ひとつは網膜の中心部以外に多く分布している杆体細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係した働きをしています。もうひとつは錐体細胞でこれは網膜の中心部である 黄斑 と呼ばれるところに多く分布して、主に中心の視力や色覚などに関係しています。網膜色素変性症ではこの二種類の細胞のうち杆体が主に障害されることが多く、このために暗いところで物が見えにくくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてきます。そして病気の進行とともに視力が低下してきます。ここで視力というのは、矯正視力(眼鏡レンズなどで、遠視、近視や乱視等を可能な限り補正して測定する視力)のことです。ちなみに、裸眼視力の変化は病気の進行や網膜の能力の変化の正確な目安にはならないと考えられています。網膜色素変性症といっても原因となる遺伝子変異は多くの種類があり、それぞれの遺伝子変異に対応した網膜色素変性症の型のあるため症状も多彩です。

 【原因】
 この病気は視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞で働いている遺伝子の変異によって起こるとされています。以前は原因となる遺伝子がわかっているのは網膜色素変性症の患者さん全体のごく一部でしかなかったのですが、最近の研究で日本人に多い遺伝子の変異が明らかになって、解析の精度とスピードもアップしてきています。現在までにわかっている原因遺伝子としては常染色体潜性(劣性)網膜色素変性症ではEYS、杆体cGMP-フォスフォジエステラーゼαおよびβサブユニット、杆体サイクリックヌクレオチド感受性陽イオンチャンネル、網膜グアニルシクラーゼ、RPE65、細胞性レチニルアルデヒド結合蛋白質、アレスチン、アッシャリン(USH2)などの遺伝子が知られています。なかでもEYS遺伝子に変異が見つかる例が比較的多いことがわかっています。常染色体顕性(優性)網膜色素変性症ではロドプシン、ペリフェリン(PRPH2・別名RDS)が主なものとされています。X連鎖性網膜色素変性症では原因遺伝子として網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)とRP2の2種類が 同定 されています。今後さらに原因となる遺伝子変異が同定される見込みです。

 【症状】
 視細胞の障害にともなった症状がでてきます。最も一般的な初発症状は暗いところでの見え方が悪くなる(夜盲)ことですが、生活の環境によっては気がつきにくいことも多いようです。最初に、視野が狭くなっている(視野 狭窄 )ことに気がつくこともあります。ひとにぶつかりやすくなる、あるいは車の運転で支障がでるといったことが気づくきっかけになります。視力の低下や色覚異常は、さらにあとから出てくるのが典型的です。しかし、コントラストの低い印刷物や罫線が読みづらいことを早くから自覚していることもあります。日常の生活環境でまぶしく感じる(羞明)、あるいは全体が白っぽく感じることもあります。この病気は原則として進行性ですが、症状の進行のはやさには個人差がみられます。また、さらに症状の組み合わせや順番にも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚異常で発見される場合もあり夜盲は後になる患者さんもいます。

 【治療法】
 この病気には現在のところ、網膜の機能をもとの状態にもどしたり確実に進行を止める確立された治療法はありません。 対症的 な方法として、遮光眼鏡(通常のサングラスとは異なるレンズ)の使用、ヘレニエン製剤(βカロテンの一種)内服、ビタミンA内服、循環改善薬による治療、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。遮光眼鏡は明るいところから急に暗いところに入ったときに感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、また明るいところで感じる眩しさを軽減させたりします。ビタミンAはアメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されていますが、すべての患者さんにはあてはまらない可能性があります。通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。また、循環改善薬による治療が行われることがありますが、その効果は明らかではありません。

<出典:難病情報センター>
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