Subject  : 辺縁系脳炎

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 辺縁系脳炎
 辺縁系脳炎は亜急性に近時記憶障害や痙攣、見当識障害をきたす重篤な脳疾患であり、原因としてウイルス感染や細菌感染、腫瘍随伴、自己免疫などが知られています。自己免疫性脳炎は、主に成人に発症し、国内患者は年間約700人と推定されています

 【原因】
 自己免疫性脳炎は、なんらかの原因で自身の神経細胞が有する蛋白質に対する抗体(自己抗体)が生じるために、自身の神経細胞の機能が障害されて発症します。しかしながら、自己抗体と標的蛋白質(自己抗原)の全容が未だ不明であり、診断が極めて困難な疾患です。
各患者血清中のこれら自己抗体価を体系的に測定した結果、てんかん関連蛋白質であるLGI1に対する自己抗体価と辺縁系脳炎発症との間に極めて高い相関があることを見出しました。 LGI1はその変異がある種の遺伝性側頭葉てんかんを引き起こすことから研究者の注目を集めています。これまでに、深田らの研究グループはLGI1がADAM22受容体を介してシナプス伝達を制御すること、そして、LGI1欠損マウスではシナプス伝達異常により、生後2-3週間で致死性てんかんを必発することを報告してきました。一方ごく最近、海外の研究者らにより辺縁系脳炎患者血清中に抗LGI1自己抗体が存在することが報告されました。しかし、LGI1自己抗体が他のさまざまな自己抗体と比較してどれほど強く自己免疫性辺縁系脳炎の発症と関連するのか、そして、LGI1自己抗体がどのようにして痙攣発作や記憶障害といった臨床症状を引き起こすかは不明でした。

 【症状】
 LGI1自己抗体を高値かつ単独で有するほぼ全ての患者さんが辺縁系脳炎と診断されていたことを見出しました。さらに、LGI1自己抗体がLGI1とその受容体であるADAM22との結合を阻害することにより、脳内の興奮性シナプス伝達の大部分を担うAMPA受容体機能を低下させることを突き止めました。AMPA受容体を介したシナプス伝達の制御機構は記憶、学習の根幹を成すと考えられていることから、LGI1自己抗体によるAMPA受容体機能制御の破綻は辺縁系脳炎の記憶障害やてんかん症状を引き起こすと考えられます。

強い意識障害で始まる広汎性脳炎に対し,辺縁系脳炎は扁桃体や海馬など辺縁系を傷害し記憶障害や精神症状で始まることが多い。従来から報告されてきた悪性腫瘍に随伴する傍腫瘍性辺縁系脳炎に加え,近年,悪性腫瘍の有無に関わらず神経細胞表面抗原に対する抗体が関与する辺縁系脳炎の存在が次々と報告され,自己免疫性辺縁系脳炎と総称されている。中でもN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体が関与する自己免疫性辺縁系脳炎は,幻覚などの精神病症状や行動異常を呈することから初期には統合失調症と診断されることも多く1,8,15),精神科臨床と関わりが深い。これらの自己免疫性辺縁系脳炎に罹患する患者は子どもから高齢者まで幅広い年代に及び,免疫療法が有効であることなどから早期診断,早期治療がより重要である。

単純ヘルペス性辺縁系脳炎の特徴 1. 臨床 初発神経症状では「精神症状」>「意識障害」>「痙攣」などが多い。 発熱・髄膜刺激症状・せん妄を含む意識障害・痙攣発作・幻覚・記憶障害などが中核症状 である

<出典:>
 ⇒ 指定難病一覧

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