Subject  : 全身型若年性特発性関節炎(指定難病107)

カテゴリー: 健康・医療情報 > 


 全身型若年性特発性関節炎(指定難病107)
 若年性(じゃくねんせい)=16歳未満、特発性(とくはつせい)=原因不明の意味で、16歳未満の子どもさんに発症した6週間以上続く(=慢性)関節の 炎症 を若年性特発性関節炎、英語表記でJIA(juvenile idiopathic arthritis)と呼びます。JIAは、国際リウマチ学会(ILAR)の分類基準により7つの病型に分けられています。そのうち小児期発症特有の病型は、「全身型」、「少関節炎」、「 リウマトイド因子 陰性多関節炎」、「リウマトイド因子陽性多関節炎」で、後者3つは関節型JIAとも呼ばれます。「全身型」は、1か所以上の関節炎に2週間以上続く発熱を伴い、それに皮膚の発疹、全身のリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ、漿膜炎のいずれかがあるものをさします。「少関節炎」は、発症6か月以内の関節炎が1〜4か所にとどまるもので、関節炎が全経過を通して4か所以下の“持続型”と、発症6か月以降に5か所以上に増える“進展型”に分けられます。「リウマトイド因子陰性多関節炎」「リウマトイド因子陽性多関節炎」は、発症6か月以内の関節炎が5か所以上に見られるもので、それぞれリウマトイド因子が陰性または陽性のものです。リウマトイド因子とは、ヒトのもつ 免疫グロブリン G(IgG)に対する 自己抗体 で、リウマチ性疾患の患者さんの血液中にしばしば見られます。

 【原因】
 「少関節炎」は1〜5歳の幼児に多く発症し、男の子より女の子が3〜4倍多くいます。「リウマトイド因子陰性多関節炎」はどの年齢でも発症しますが2歳頃と7歳頃に2つピークがあり、女の子が2倍多くいます。「リウマトイド因子陽性多関節炎」は8〜14歳の学童期に多く発症し、女の子が5〜6倍多くいます。 原因は不明です。

 【症状】
 発疹は鮮やかな紅色で、通常盛り上がりやかゆみはなく短時間で消失したり移動したりします。関節痛も発熱の出入りに伴い強弱がみられます。 発熱は1日中続くわけではなく、40℃を超える高熱が突然出現し、解熱薬を使わなくても短時間で自然に下がります。このような発熱は数週間続きますが、発熱のない時は比較的元気で、熱発する時にはよく寒気を訴えます。 また、全身のリンパ節が腫れたり、肝臓や脾臓が腫れたり、時に漿膜炎(胸膜炎、腹膜炎)による腹痛や胸痛などをともなうこともあります。 全身の炎症が長く続くと、心臓や肺を包む膜に水が貯まったり(心のう水・胸水)、血液の固まり方が悪くなったり(播種性はしゅせい血けっ管内かんない凝固ぎょうこ)、いろいろな臓器の機能障害がでるなど( 多臓器不全 )、 重篤 な状態になる場合があります。 関節型:関節炎は、指にある小さな関節から膝・手首・肩などの大きな関節にも起こります。関節痛は朝につよく、こわばり感を伴います。腫れや痛みのため関節を動かさなくなったり、ぎこちない歩き方になったりします。関節痛を訴えることができない小さな子どもさんでは、午前中は機嫌が悪い、抱っこをせがむ、触られるのを嫌がるなどの様子がみられます。

 【治療法】
 関節の痛みや腫れに対しては非ステロイド抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug: NSAID)を使用します。 全身型:ステロイドが治療の中心です。病気の勢いが強い時期には、大量のステロイドが必要ですが、治療で一旦病勢がおさまれば、その後は時間をかけてステロイドの投与量を減らし、大部分はステロイドを止めることができます。一方、ステロイドで病勢が落ち着かない例、ステロイドがある程度まで減るとそのたびに病気が 再燃 するような例、ステロイドの副作用のため増量・継続が難しい例、関節炎が長引く例では、トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体製剤)やカナキヌマブ(抗IL-1抗体製剤)という生物学的製剤をつかいます。 関節型:抗リウマチ薬であるメトトレキサート(methotrexate: MTX)が治療の中心です。MTXを使用しても関節炎が落ち着かず、関節破壊が進行する可能性がある例や、MTXの副作用で継続が難しい例では、トシリズマブ、エタネルセプト(TNF受容体製剤)、アダリムマブ(抗TNF抗体製剤)、アバタセプト(T細胞選択的共刺激調節剤)などの生物学的製剤をつかいます。

<出典:難病情報センター>
 ⇒ 指定難病一覧

[メニューへ戻る]  [カテゴリー一覧]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]