Subject  : ブラウ症候群(指定難病110)

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 ブラウ症候群(指定難病110)
 ブラウ症候群は、皮膚と関節そして眼にサルコイドーシスと呼ばれる病気によく似た 肉芽腫 ができる病気です。 1985年にアメリカの小児リウマチを専門とするブラウ医師によって、皮膚と関節そして眼に4世代に渡って肉芽腫を来す家族が報告されたのが家族例としては最初の報告であり、このためブラウ症候群と呼ばれます。この病気を起こす原因遺伝子は、消化管に肉芽腫をつくるクローン病とほぼ同じ場所に位置する遺伝子なのではと推定されていましたが、2001年になってクローン病の発症に関わる遺伝子の1つとしてNOD2という遺伝子が 同定 されると、ブラウ症候群でも同じNOD2遺伝子に遺伝子変異があることが分かりました。しかしながら、クローン病とブラウ症候群では同じNOD2遺伝子に変異を認めますが、遺伝子変異の位置は2つの病気では異なり、クローン病ではNOD2が機能を失ってしまうのに対して、ブラウ症候群では逆に常に活性化してしまうという違いがあることが知られています。 一方、通常のサルコイドーシスは学校や職場なででの健康診断の際に撮影される胸部レントゲン写真によって、両側の 肺門 部のリンパ節が腫れることで発見されることが多いのに対して、非常に稀ではありますが4歳以前に発症して、一般のサルコイドーシスでは侵されることが少ない関節の症状が強く現れる患者さんが古くから知られており、若年発症サルコイドーシスと呼ばれていました。そして2005年に我が国によって行われた検討が契機となって、この若年発症サルコイドーシスもNOD2遺伝子の変異によって病気になることが明らかにされ、今日では若年発症サルコイドーシスとブラウ症候群は同一の病気であることが分かりました。このため、ここでは両者を区別せずに、ブラウ症候群として扱います。

 【原因】
 ブラウ症候群の患者さんでは、微生物の細胞の周りを取り囲んでいる細胞壁の一部を、私達の細胞の中で認識して免疫反応を起こして体を守っているNOD2という分子の遺伝子に変異があることが分かっています。健康な人は微生物が細胞の中へと入ってきた時にだけこの分子が反応して免疫反応を起こすのに対して、ブラウ症候群の患者さんでは微生物がない状態でも常にこの分子が活性化しています。その結果、この部分はまだ充 には解明されていないのですが、細胞内で 炎症 を起こすような仕組みが起こってしまい、皮膚と関節そして眼に肉芽腫と呼ばれる状態が作られます。

 【症状】
 ブラウ症候群は、皮膚と関節そして眼に肉芽腫ができる病気です。肉芽腫とは炎症が長く続く結果として、白血球などの炎症に関わる細胞や線維芽細胞が集まって作られる腫瘤です。本来であれば体の中へと侵入してきた微生物や異物は、免疫反応によって排除される仕組みが働くのですが、この反応で上手く対処できなかった場合には、炎症細胞や線維芽細胞によってその異物を取り囲むという反応が起こります。これが肉芽腫です。 最初は、皮膚に症状が現れます。BCG接種が契機となった患者さんも報告されています。痒みのない5mm程の大きさの硬いブツブツ( 丘疹 )ができます。ジクジクとすることはなく、むしろ皮膚は乾燥します。場合によっては全身の皮膚に症状が出ますが、数ヶ月の経過で良くなったり、また現れたりします。年齢が進むと皮膚の症状は全く消えてしまう人もいるので、見逃されていることもあります。 関節症状は、ブラウ症候群に非常に特徴的な症状であり、診断をつける上でとても大切になります。特に、手関節の背面や足関節の背側に痛みを伴わない柔らかい膨らみ(嚢腫構造)ができます。手指もソーセージを思わせるように腫れることがありますが、このような場合にも痛みはなく、また触っても熱くはなりません。病院で関節エコーを使って検査をして貰うと、骨と骨の間よりも、骨を動かすための腱の周り(腱鞘)に炎症が多いことが分かります。 皮膚と関節そして眼の中で、最後に現れる症状が眼の症状で、ぶどう膜炎の症状が現れます。このため、眼に症状が無いからといって、ブラウ症候群ではないと否定することはできません。 また、2020年に実施した調査からは、約半数の患者さんで発熱がみられることも確認されました。

 【治療法】
 現時点では、ブラウ症候群に 特異的 な治療法は確立していません。 ブラウ症候群という病気の存在が今ほど認知される前は、若年性特発性関節炎(JIA)として加療されている患者さんが多くみられました。そのような患者さんの中では、比較的大量のステロイドが投与された患者さんでは関節や眼の症状が進んでいないと言われています。また、抗TNFα抗体による治療を受けた患者さんは関節の炎症を抑えられるとともに、その後の目の症状が抑制されているとも報告されています。 目の症状に対しては、抗TNFα抗体であるアダリムマブが非感染性ぶどう膜炎に適応症をもっていることから、症状が強い患者さんではこの薬剤が使用されています。

<出典:難病情報センター>
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