Subject  : 遺伝性ジストニア(指定難病120)

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 遺伝性ジストニア(指定難病120)
 ジストニアとは持続性の筋収縮により生じる症状で、一部の患者では筋収縮の持続が短く不規則であったり、間歇的・律動的に観察されることもある。持続性の異常な筋収縮により姿位の異常を来すことが多い。ジストニアを症候として示す疾患には多々あるが、遺伝性があり、他の神経変性疾患に属さない疾患群を遺伝性ジストニアと呼ぶ。この群の中には、遺伝子が未だ同定されていない疾患群も多々あるが、ここでは遺伝性ジストニアのうち原因遺伝子が同定されている疾患群を扱う。遺伝性ジストニアは、遺伝子の異常によりジストニア症状を含む様々な症状を来す疾患で、DYTシリーズに属する群と金属代謝に関連するNBIAシリーズに属する疾患が多くを占める。 遺伝性ジストニアの多くは幼児から成年期(遅くても30歳代)に発症し、四肢、体幹、頭頸部のいずれかにジストニアを認める。ジストニアは進行性に症状の増悪や姿位の異常を来し、歩行障害、起立障害、座位障害を来す。疾患によっては他の不随意運動−例えば振戦、舞踏運動、ミオクローヌスなどを同時に示すことがある。また、精神発達遅滞や知的機能減退を示すこともある。遺伝性ジストニアの多くは進行性の病態を示し、発症要因については未解明な部分が多い。一般に、予後は不良であるが、疾患によっては対症療法によって症状の一部が軽快又は緩解する場合もある。この場合にも継続治療と適切な対症療法が必要である。 厚生労働科学研究班及び国立精神・神経センター委託研究による研究班によれば、遺伝性ジストニアと診断された症例は全国で約500人である。また、NBIシリーズに関する調査ではNBIに罹患している症例数は100例未満である。

 【原因】
 遺伝性ジストニアの原因遺伝子については、DYTシリーズでは約半数で病因遺伝子が同定され、NBIAシリーズは全ての病因遺伝子が同定されている。遺伝様式はDYTシリーズでは常染色体優性、常染色体劣性、伴性劣性遺伝様式を示す疾患など多様である。NBIAシリーズの多くは常染色体劣性遺伝様式を示すが、NBIA5(BPAN)は伴性優性遺伝様式を示す。原因遺伝子は同定されているものの、発症機構については未解明の部分が多い。

 【症状】
 ジストニアは運動障害の一つで、持続性又は反復性の筋緊張のために、顔面・頭頚部、四肢・体幹筋の定型的な肢位・姿勢の異常や不随意運動を生じ、このため随意運動が障害される。症状の分布により、局所性・分節性・全身性に分けられる。また、発作性にジストニアが発現したり、ミオクローヌスを伴うものやパーキンソニズムを伴うものもある。特定の動作に随伴してジストニアは発現する傾向があり、特定の感覚的刺激によって症状が軽減する感覚トリックが認められることが多い。また、音楽家や理容師、タイピスト、スポーツ選手など、特定の職業動作に伴って出現することがある。 遺伝性ジストニアにはジストニアのみを呈する群とジストニア以外の症状も示す群、何らかの誘因などによって生じる発作性ジストニアの群とがある。遺伝性ジストニアの多くは同一遺伝子変異による病型であっても、家系間、家系内で病像が異なることがあり、留意すべきである。多くの場合は世代を経るごとに全身型となり、発症年齢も早くなる傾向を示す。ジストニア以外の症状を示す群でみられる随伴症候としては他の不随意運動(振戦、ミオクローヌス、舞踏運動が多い。)、パーキンソン症状があり、精神症状としては認知障害、精神発達遅滞、てんかん発作の頻度が高い。 検査所見としては、DYTシリーズではDYT3ジストニアでのみ画像検査での異常所見を示し、NBIAシリーズではすべての病型で、MRIで基底核への鉄沈着像を認める。その他、無セルロプラスミン血症(aceruloplasminemia)ではセルロプラスミン欠損、糖尿病などを、神経フェリチン症(neuroferritinopathy)ではフェリチン値低値を認める。NBIAシリーズに属する疾患の各病型の特徴的な画像所見の詳細については各論で付記する。

 【治療法】
 効果的な原因療法は確立されていない。対症療法としては、薬物治療(抗コリン剤、抗てんかん薬、L-dopa製剤など)やボツリヌス毒素の局部注射療法、定位脳手術(後腹側淡蒼球凝固術、視床凝固術、脳深部刺激療法)がある。DYT5ジストニアでは、レボドパを適切な時期に服用を開始し、投与を継続することにより、症状はほぼ消退する。遺伝性ジストニアで全身性や分節性ジストニアで症状が広範囲の場合、薬物療法は無効で、深部脳刺激法や髄腔内バクロフェン投与法が著効することがある。いずれの場合にも発症早期に介入した方が予後がよい。 発作性ジストニアの場合及びDYTシリーズの一部では以下の診断指針に示すような薬物が有効である。

<出典:難病情報センター>
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