Subject  : 甲状腺クリーゼ

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 甲状腺クリーゼ
 甲状腺中毒症(甲状腺ホルモン高値)の治療が不十分であったり治療を受けていな場合に、肺炎などの感染症や大怪我・手術などのストレスをうけると、甲状腺ホルモンの過剰な状態に耐え切れなくなり、複数の臓器の機能が低下し、死の危険が切迫した状態になります。この状態を「甲状腺クリーゼ」といいます。高熱をともない、脈が速くなって意識がもうろうとします。また心臓や肝臓の機能が急速に低下するため、呼吸が止まったり全身が黄色(黄疸)くなったりします。

甲状腺クリーゼは、日本内分泌学会によって2009年に実施された全国疫学調査結果に基づいて診断基準が改訂され、「甲状腺クリーゼの診断基準」の第2版が発表されました。それによると、甲状腺ホルモンが多量に分泌されることで全身の代謝が高まる甲状腺機能亢進症の患者さんで、未治療もしくは甲状腺ホルモンのコントロールが不良な方に、なんらかの強いストレスが加わった際に発症するとされています。甲状腺ホルモンが過剰に作用し、複数の臓器が機能不全に陥り生命の危機に直面するため、緊急治療が必要になります。

 【症状】
 1 中枢神経症状:不穏(大きな声で叫んだり、暴力をふるったりしやすい状態)、せん妄(話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる状態)、精神異常、傾眠(けいみん/周囲からの刺激があれば覚醒するが、すぐに意識が混濁する状態)、痙攣、昏睡
2 38℃以上の発熱
3 1分間に130回以上の頻脈(甲状腺機能亢進症では1分間に100回以上が多い)
4 心不全症状:肺水腫(血液の液体成分が血管の外へ滲み出していること)、肺野の50%以上の湿性ラ音(肺の異常音)、心原生ショック(急激に心臓の働きが低下し、全身の臓器の働きが低下すること)
5 消化器症状:吐き気・嘔吐、下痢、黄疸

血液検査で甲状腺ホルモンの「FT3」と「FT4」の少なくともどちらか一方が高い値を示し、動悸や息切れなど甲状腺中毒症の症状が現れるのに加えて、上記の1と2〜5が1つ以上、もしくは2〜5で3つ以上当てはまる場合は、甲状腺クリーゼと確定されます。
甲状腺クリーゼは、このように細かく定義が決められています。診断基準に照らし合わせると、発症頻度は国内で150人以上、致死率は10%以上です。発症頻度は少ないですが、発症すると生命の危機に陥る非常に重い症状です。

 【治療法】
 生命が危険な状態にあるため、集中治療室に入院して、呼吸や血圧の管理をすることが必要です。血中の甲状腺ホルモンを減らし、その作用の影響を軽くするため、ホルモンの合成や分泌を抑える抗甲状腺薬や無機ヨウ素および副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与を行います。同時にきっかけとなっている病気や症状に対して治療を行います。

<出典:日本内分泌学会>
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