Subject  : 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37)

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 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37)
 乾癬には、最も発症頻度の高い尋常性乾癬の他に亜型として、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がある。広義の膿疱性乾癬には膿疱性乾癬(汎発型)と限局性膿疱性乾癬(掌蹠膿疱症、アロポー稽留性肢端皮膚炎)があり、本稿で取り扱うのは膿疱性乾癬(汎発型)である。膿疱性乾癬(汎発型)には急性汎発性膿疱性乾癬(von Zumbusch型)、小児汎発性膿疱性乾癬、疱疹性膿痂疹などが含まれる。von Zumbusch型は、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発するまれな疾患である。その他の型では、全身症状はないか、あっても軽度で紅斑と膿疱を繰り返し、慢性に経過する。 経過中に、全身炎症反応に伴って臨床検査異常を示し、しばしば粘膜症状、関節炎を合併するほか、まれに眼症状、心・循環器不全、呼吸器不全、二次性アミロイドーシスを合併することがある。膿疱性乾癬(汎発型)と鑑別を要する疾患として、膿疱型薬疹(急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)を含む。)や角層下膿疱症がある。

 【原因】
 膿疱性乾癬(汎発型)は、尋常性乾癬(肉眼的に膿疱を形成することが少ない炎症性角化症の代表的疾患の一つ)が先行して発症する症例がある一方で、全く尋常性乾癬と関連がない症例もある。尋常性乾癬のHLA(遺伝的背景)解析の結果、我が国および海外においてHLA-Cw6の集積性がみられるが、膿疱性乾癬(汎発型)では関連がなく、両者は異なる遺伝的素因を有することが示唆される。 近年の膿疱性乾癬(汎発型)の家族内発症例の検討によって、その原因遺伝子として好中球の遊走に重要なIL-8をはじめとする炎症性サイトカイン産生に関与するIL-36の働きを制御するIL-36受容体アンタゴニストをコードするIL36RN遺伝子の変異が相次いで報告され、さらに孤発例においても尋常性乾癬が先行しない膿疱性乾癬(汎発型)の大半はIL36RN遺伝子の変異を有していることが明らかになってきた。

 【症状】
 急性期症状は、前駆症状なしに、あるいは尋常性乾癬皮疹が先行し、灼熱感とともに紅斑を生じる。多くは悪寒・戦慄を伴って急激に発熱し、全身皮膚の潮紅、浮腫とともに無菌性膿疱が全身に多発する。膿疱は3〜5mm大で、容易に破れたり、融合して環状・連環状配列をとり、ときに膿海を形成する。爪甲肥厚や爪甲下膿疱、爪甲剥離などの爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、ときに結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある。
慢性期には、尋常性乾癬の皮疹や、手足の再発性膿疱の他、非特異的紅斑・丘疹など多様な症状を呈する。急性期皮膚症状が軽快しても、強直性脊椎炎を含むリウマトイド因子陰性関節炎が続くことがある。

 【治療法】
 エトレチナートとシクロスポリンはいずれも第一選択薬である。メトトレキサートは、他の全身治療に抵抗性の症例や、関節炎の激しい症例に推奨されるが、副作用(肝障害、骨髄抑制、間質性肺炎など)に留意し、十分なインフォームドコンセントに配慮する必要がある。 妊娠までの最低限の薬剤中止期間は、エトレチナートでは女性2年間、男性6か月、メトトレキサートでは男女とも3か月とされている。 TNFα阻害薬は、膿疱性乾癬(汎発型)に対して有効であり、特に重症関節症合併例に対して推奨される。また、IL-17A阻害薬、IL-17受容体阻害薬も膿疱性乾癬に有効性が示され適応が追加された。 顆粒球吸着除去療法は膿疱性乾癬(汎発型)に対して副作用の少ない安全な治療として推奨されている。

<出典:難病情報センター>
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