Subject   : 怪我のとき血液が止まる仕組みと血栓

カテゴリー  : 学びの館 > 生物 


 怪我のとき血液が止まる仕組みと血栓
私たちの体の中には無数の血管が存在し、なかを流れる血液が体中の 細胞に酸素を運んでいます。 血液は体重の7〜8%を占めるといわれており、60 kgの男性では 約5リットルもの血液が体中を巡っています。心臓は、通常の状態の 普通の人で1分間に約5リットルの血液を送り出すことができます。 ですから、約1分で血液は体を一回りすることになります。 血液が体の隅々まで行き渡らないと「虚血」という状態になります。 特に酸素をたくさん必要とするのは脳で、ほんの数分血液が回って こないだけで、大変なダメージを受けます。

ちょっと皮膚をすりむいても体の外に血液が流れ出してしまいますが、 流れ出し続けることはありません。血液は血漿と呼ばれる 液体と血球と呼ばれる細胞からできています。血管が破れると、 血漿の中にあるフィブリノーゲンという たんぱく質が、最終的に トロンビンと呼ばれる プロテアーゼ(たんぱく質を切断する酵素) で切断され、フィブリンというたんぱく質に変化し、さらに血球の うちの血小板と呼ばれる細胞も一緒になって 集まってきて、 網状の固まりを造ります。ここにさらに他の血球も引っかかり、 血液凝塊と呼ばれる大きな固まりを造って血管の穴を塞ぐわけです。

このようにして、私たちはちょっとした怪我なら放っておいても自動的に 血が止まり、傷が治っていきます。

大変便利なしくみですが、上の反応が破れていない血管で起こるとどうなるでしょう?破れていない血管の途中で、間違えて固まりができてしまうことは、健康な人でも、実は結構頻繁に起こっていて、これを血栓と言います。血栓は、健康な人では、プラスミンと呼ばれる血栓を分解するプロテアーゼによって、跡形もなくなります。ですから、血管が詰まってしまうことはありません。しかし、血液の水分が少ない(いわゆる「ドロドロ」)状態やある種の病気では、血栓のできる頻度が非常に高くなり、プラスミンの働きが追いつかず、血管が詰まってしまうことがあります。血管が詰まるとそこから先にある細胞には酸素が行かなくなり、死んでしまいます。脳に行く途中の血管が詰まることを脳血栓と呼び、最初に書いたように重篤なことになることもあります。有名な「エコノミー症候群」は、狭いエコノミー座席で体を窮屈な姿勢のままにしておくため、血液の循環が悪くなり、血栓ができやすくなって起こります。

 ⇒ 血液はなぜ赤い?

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