Subject   : 脾臓(ひぞう、spleen)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 脾臓(ひぞう、spleen)
左の上腹部にあり、上方は横隔膜に接し内側は左の腎臓と接している。前方には胃が存在する。肋骨の下に隠れており通常は体表からは触れない。
脾臓の大きさは、長さ12cm、幅7.5cm、厚さ5cm程度である。重量は内部の血液量で変化するが100~200g程度である。柔らかく色は赤紫色である。
なお、東洋医学でいう五臓六腑(五臓:肝・心・脾・肺・腎)の一つである「脾」は「脾臓」とは異なっている。五臓の「脾」は主に消化吸収などを担っており、解剖学的に対応する臓器はむしろ「膵臓(すいぞう)」である。

◆ 脾臓の組織・構造
脾臓の表面は白く厚い被膜で覆われている。 一部は動脈を伴い脾臓の内部へと入り込んでいる。この構造を脾柱という。脾柱は脾臓の内部で複雑に絡み合い網目状となる。網目は柱網と呼ばれ脾臓の形態構築にかかわっている。網目の内部は白い斑状の組織である白脾髄(white pulp)と赤い組織の赤脾髄(red pulp)で埋められている。白脾髄はリンパ球の集まりであり免疫機能を担っている。赤脾髄には毛細血管が豊富に存在し赤血球に富んだ組織である。

◆ 脾臓の機能
免疫機能:白脾髄でリンパ球を作り、病原体に関わる情報を伝えるマクロファージや樹状細胞の働きにより、ウイルスなどの外敵に抵抗するリンパ球の抗体づくりを促す。
造血機能:骨髄で造血が始まるまでの胎生期には、脾臓で赤血球が作られている。生後はその機能は失われるが、大量出血や骨髄の機能が抑制された状態では再び脾臓での造血が行われることがある。
血球の破壊:古くなった赤血球の破壊を行う。赤血球中のヘモグロビンも破壊され鉄を回収する働きもある。(赤脾髄)
血液の貯蔵機能:血液を蓄える機能がある。人間ではそれほど多くの血液の貯留はされないが、犬や馬などの動物では大量の血液が貯留されている。筋肉が大量の酸素を必要とするような運動時には、脾臓から貯蔵されていた血液を駆出することで充分な酸素を筋肉へ送り届けることが出来る。急激な有酸素運動をとった際に起きる、胸部を締め付けらるような痛みはこの働きによるものである。
脾臓を摘出してもヒトは生きてはいけるのだが、長期的には免疫力が低下するため、その場合は肺炎球菌ワクチンの接種が必要となる。

 ⇒ リンパ系

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