Subject   : グラム陽性菌とグラム陰性菌

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 グラム陽性菌(gram-positive bacteria)
 色素による染まり方で分類する方法です。青く染まる菌をグラム陽性菌、ピンク色に染まる菌をグラム陰性菌と呼びます。グラム陽性菌とグラム陰性菌では、起こす感染の種類だけでなく、有効な抗生物質の種類も異なります。

 グラム陽性菌は、脂質二重層からなる細胞膜と、その外側にある厚さ 20-80 nm のペプチドグリカン層によって覆われている。厚いペプチドグリカン層は、エタノールによるクリスタルバイオレットの脱色を防ぐことで、グラム染色において青色・紫色に染色される。Bacillus 属、Streptococcus 属などがグラム陽性菌である。
グラム陽性菌は抗生物質に対する耐性を容易には獲得しませんが、炭疽菌やボツリヌス菌などのように、重い病気を引き起こす強い毒素を出すものがあります。
 グラム陰性菌(gram-negative bacteria)
ピンク色に染まる菌をグラム陰性菌

 グラム染色において、クリスタルバイオレットによる染色が脱色される細菌の総称。グラム陰性菌の細胞質基質は脂質二重層からなる細胞膜(内膜)に覆われている。細胞膜の外側に厚さ 7-8 nm のペプチドグリカン層が存在し、その外側に脂質二重層からなる外膜が存在する。外膜には多くのリポ多糖類が付加されている。大腸菌、サルモネラ菌などがグラム陰性菌である。
グラム陰性菌には特有の外膜があり、菌体内への薬剤の浸透を阻んでいます。このため、グラム陽性菌に比べて抗生物質が効きにくいという特徴があります。また、グラム陰性菌の外膜にはリポ多糖体分子が多く存在しており、これが血流に入ると、高熱や命にかかわる血圧低下が生じることがあります(菌血症、敗血症、敗血症性ショック: はじめにを参照)。このことから、細菌性リポ多糖体は菌体内毒素(エンドトキシン)と呼ばれます。
グラム陰性菌は同種の異なる菌株と、あるいは種の異なる菌株との間でも容易に遺伝物質(DNA)を交換し、菌のもつ性質を変えることができます。そのため、あるグラム陰性菌が遺伝子の変化(突然変異)を起こして抗生物質に耐性をもつようになり、そのDNAを別の菌株と交換させると、その株も耐性をもつようになります。

 ⇒ 病原体

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