Subject   : 筋組織と筋線維

カテゴリー  : 学術情報 > 組織学


 筋組織と筋線維
筋線維からなる組織、収縮能を有する興奮性組織。 「筋線維」とは「筋細胞」のことである。 個体発生学的には、ごく一部の例外を除いて、「中胚葉」に由来する。

■ 骨格筋線維
1)酸素結合能を有するミオグロビンMyoglobinの含量により、赤筋線維と白筋線維にわける。ミオグロビン多い → 赤い、ミトコンドリアも多い、動きは緩徐だが疲労しにくい → 姿勢制御筋
2)骨格筋線維は、多核の細胞であり、核は細胞膜(Sarcolemma)直下に押しやられている。そのCytoplasmをSarcoplasm(筋形質)、Plasma membraneをSarcolemma(筋鞘)、sERをSarcoplasmic reticulum (SR; 筋小胞体または筋形質小胞体)と呼ぶ。
3)太さ約1μmの筋原線維Myofibrilsが見られるが、これはさらに細い筋細線維Myofilamentsの集合である。筋細線維は太さ数nmのアクチンフィラメントと太さ十数nmのミオシンフィラメントからなる。アクチンフィラメントは、球状のアクチンタンパク質G-actinが数珠状になり、ひも状のトロポミオシンのまわりをラセン状にdouble-helical polymer(F-actinという)を構成したもの。ミオシンフィラメントは二量体のタンパク質で、そのひとつはさらに頭部と尾部をもつHeavy meromyosinと尾部につづくLight meromyosinの分子に分けられる。
4)横紋の本体: 筋原線維内にあるA帯、I帯、H帯、Z帯(盤)、M線。 それぞれどこをさすか? 筋収縮は筋細線維のすべり説で説明できるが、筋収縮の際それぞれの帯はどうなるか? Z帯からZ帯までをひとつの単位と考え、Sarcomereという。
5)Sarcolemmaは、A帯とI帯の間A-I junctionのところで、筋原線維の走行と垂直な方向に落ち込み入り込んでいる。これをT系Transverse systemという。T系は、SR(またはL系)のTerminal cisternae と寄り添うように膜が向かい合い、これを三つ組みTriadsという。 Sarcolemmaに起こった脱分極を筋線維全体にすばやく伝える役目をしている。
6)骨格筋線維は再生が可能であるが、活発に再生できる組織ではない。

■ 心筋線維
1)骨格筋が、細長い1本の線維であったのに比し、心筋は枝分かれをしたような形をとる。 核は通常1または2個で、心筋線維(心筋細胞)の中央にある。
2)筋線維と筋線維は連続しているように見えるが、じつは介在板Intercalated disksで隔てられている。ここにはデスモゾームやギャップ結合(ネクサス)があり、興奮の伝導に役立っている。
3)筋原線維、筋細線維、横紋、などは骨格筋の場合と同様。ただしT系はZ帯のところにある。
4)心筋線維の再生は不可能。
5)内分泌(ホルモンの分泌)をも おこなう筋細胞がある。 → 心房筋特殊顆粒
6)刺激伝導系Pulse-conducting systemまたは特殊心筋と呼ばれる、興奮伝達に特化した心筋線維がある。

■ 平滑筋線維
1)骨格筋線維に比し短い(20‐500μm)。枝分かれもしない。 核は中央に1個。
2)横紋が見られない。 筋細線維は持つが、明瞭な筋原線維とはならない。 筋細線維そのものは、骨格筋や心筋の場合と同じであるが、 Sarcomereは存在しない。 T系も認められない。
3)骨格筋線維の収縮が電位依存性チャネルを通る筋小胞体からのCa++動員によってなされるのに反し、Ca++の働きははカルモデュリンによってコントロ−ルされる。
4)ネクサス(ギャップ結合)をもつ。
5)平滑筋線維の再生は、さかんにおこなわれうる。
 ⇒ 人のからだの組織
 ⇒ 筋肉(muscle)

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