Subject   : 形質転換と形質導入 (Transformation and transduction)

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 形質転換と形質導入 (Transformation and transduction)
 形質転換、形質導入ともに細菌の細胞に外からDNA分子が入り、菌の性質が変わることをいう。形質転換は裸のDNA分子が直接細菌に入ることにより起こる。それに対し、形質導入は、バクテリオファージ粒子のなかにある細菌染色体の一部を含むDNA分子がファージ粒子の細菌への吸着にともない細胞中に注入されることにより起こる。形質転換は、1920年代にグリフィスにより肺炎双球菌において観察された。1944年エイブリーらは、形質転換をひき起こす物質がDNAであることをつきとめた。形質導入は1950年代バクテリオファージの遺伝現象の研究において発見された。形質転換、形質導入ともに、発見されて以来、人工的に遺伝子組換え細菌を得る手法として用いられてきた。また、自然界においても、細菌が抗生物質への耐性を獲得したり新たな環境に適応するときなどに、形質転換や形質導入による種を超えた遺伝子の伝達が起きている場合があると考えられる。

 ■ 形質転換(Transformation)
 細胞の外部から遺伝子を挿入し、細胞の遺伝的な形質を変化させること。肺炎双球菌の病原性を持たない R 型菌に、病原性を持つ S 型菌の DNA を注入すると、R 型菌が形質転換により病原性を持つようになる。
英語のtransformation には上記の意味に加えて、正常な動物細胞が無制限に分裂を行うようになる、つまりがん化の意味(悪性形質転換を参照)や、化生の中で特にダイナミックなもの(幹細胞まで脱分化したり組織の基本形の壁を越えて変化したりするもの)の意味を含み、混同を避けるため、動物細胞への遺伝子導入は トランスフェクション(transfection)が通常使用される。またファージやウイルスを用いた遺伝子導入は形質導入(transduction)と呼ばれる。
バクテリアに対する形質転換としては、電気パルスにより瞬間的に細胞に穴を開けるエレクトロポレーション法や、塩化カルシウム存在下でコンピテントセル化した菌を用いる方法が広く使用されている。通常はファージ、プラスミドなどのベクターを用いて外来遺伝子を導入する。植物細胞に対してはアグロバクテリウム、パーティクル・ガン法やエレクトロポレーションがよく使用される。糸状菌などに対してはプロトプラスト-PEG法やエレクトロポレーション法、酵母に対してはLi法などがよく使用される。また、この他にもBiolistic法などもある。

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