Subject   : マイナス鎖RNAウイルス

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 マイナス鎖RNAウイルス
  ウイルスゲノムが分節しているものと分節していないものに分けられる。分節しているものの代表がインフルエンザウイルス(Orthomyxovirus)である。狂犬病ウイルス(Rhabdovirus)、麻疹ウイルス(Paramyxovirus)、Ebola熱(filovirus)、などは分節していない。これらのウイルスはいずれもエンベロープを被っている。感染後まず必要な蛋白をコードする+鎖RNAを作るためにウイルス粒子の中にはRNAポリメラーゼが存在する。 分節ウイルスは、異なったウイルスが一つの細胞に感染し増殖するとゲノムの 再配分(reassortment)が起こり、抗原シフト(antigenic shift)が起こる。一つの遺伝子がそっくり置き換わるので抗原性などの変化が大きい。これに対し、一つの株が感染を繰り返し、その過程で点変異により抗原性が変化するのを抗原ドリフト(antigenic drift)と云う。  ウイルスエンベロープにあるHA(血液凝集素)が細胞表面のシアル酸に付くと、HAー1、HAー2、に切断され、ウイルス粒子表面と細胞膜との融合が起こる。これで感染が開始する。ウイルス中和抗体は主にこの蛋白を標的とする。  ウイルス表面にはHAが発現しているので細胞表面で作られた成熟したウイルス粒子も細胞表面のシアル酸とくっつき細胞から離れない筈である。そこで、ウイルス粒子が細胞からはなれ放出される為にNA(ノイラミニダーゼ)がある。NAはシアル酸を外す作用があり、細胞からのウイルスの放出に大きな働きをする。ウイルスが細胞に感染すると、ゲノムは nucleocapsid(ウイルス粒子中のポリメラーゼPA、PB1、PB2と結合)のかたちで核に移行し、そこでcapを持つ細胞mRNAの10-15ヌクレオチドをプライマーとしウイルスmRNAの転写が起こる(図15-2-2-1)。ゲノムRNAはこうして出来た+鎖RNAを鋳型として作られる。mRNA、ゲノムRNAは細胞質に移行し、mRNAはウイルス蛋白を作り、ゲノムRNAを取り込んでウイルス粒子となる。−鎖RNAのみが、1セットどうやってうまくウイルス粒子に取り込まれるのか、詳細は不明である。

 ■ A型インフルエンザウイルス
 A型インフルエンザウイルスのHAには16種類(H1〜H16)、NAには9種類(N1〜N9)あり、この組み合わせによりA型インフルエンザウイルスにはH1N1〜H16N9の144種類の"亜型"が存在し、非常に多様性をもつことがわかります。

毎年流行するインフルエンザには、亜型H1N1型(HAがH1、NAがN1)、亜型H3N2型(HAがH3、NAがN2)などがあり、それぞれ「Aソ連型」や「A香港型」といわれています。そして、現在、人での感染が拡大している鳥インフルエンザH7N9型はHAがH7、NAがN9を持つ亜型、東南アジアをはじめ世界各国で発生している鳥インフルエンザH5N1型は、HAがH5、NAがN1を持つ亜型です。

A型インフルエンザウイルスは鳥をはじめ、人、ウマ、ブタ、トラ、アザラシ等に広く感染する人畜共通に感染するウイルスです。毎年冬に風邪症状をもたらす流行性感冒で“季節性のインフルエンザ”といわれるもの、鳥が感染して大量死をもたらす場合もある“鳥インフルエンザ”、そして、鳥インフルエンザウイルスが人から人へ効率よく感染するように変異し、大規模な感染をもたらす“新型インフルエンザ”、これらは全て原因となるウイルスの亜型が異なりますが、A型のインフルエンザウイルスによるものです。

 ■ B型とC型インフルエンザウイルス
 B型インフルエンザウイルスにもHAとNAがありますが、それぞれ1種類しかなく、C型インフルエンザウイルスにはヘマグルチニンエステラーゼ(HE)しか存在しないため、多様性は乏しくなっています。 通常、人に流行を起こすインフルエンザウイルスはA型とB型で、C型は軽いかぜ症状のみです。

 ⇒ ウイルスの種類

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