Subject   : 補体(Complement)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 補体(Complement)
 動物の血清中の約20種類の蛋白で構成される物質。遺伝的な欠損症の研究にもとづき補体第1成分(C1)から第9成分(C9)まで分類されている。

補体系が抗体や細菌成分によって刺激されると連鎖反応を起こし、食細胞の機能の増強、抗原・抗体の結合の強化、リンパ球からの活性物質放出の促進、あるいは細菌の溶解など多彩な働きをする。最近の研究から、異種間移植で起こる超急性拒絶反応でも補体系が重要な役割をはたしているといわれる。

ヒツジの赤血球(抗原)で免疫して得られた抗血清(抗体)と、ヒツジ赤血球を反応させると溶血現象がみられるが、その抗血清を加熱処理(非働化:56゚C,30分)すると溶血しない。しかし、新鮮な正常無処理血清を加えると再び溶血する。この現象は溶血をおこすには抗体のほかに、正常血清中に含まれている他の因子が必要であることを示しており、その溶血に必要な因子を補体と名づけられた。補体はC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8 ,C9のタンパク質9成分から成っている。また、補体の各成分は細胞の破壊作用のほかに種々の炎症の媒介や病原体の貪食促進作用など生体の防御に重要な役割を果していることが明らかにされつつある。補体の活性化は抗原-抗体の複合物によって引きおこされる古典経路と、その他の種々の物質によって活性化される第二経路がある。

補体が活性を持つには、一連の連鎖反応が必要である。連鎖反応の最初は C3 の活性化で始まる。C3 を活性化するのは、細菌表面に付いた抗体に結合したC1、或いは、細菌表面に結合した C3 が切れて出来るC3bである。活性化した C3 は C5 を C5aとC5b に切断する。C5b は C6、C7、C8、C9 を細菌表面に集合させ MAC(membraneattack complex)をつくる。MAC は細胞膜に穴をあけ、菌を殺す。

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 ⇒ 免疫のメカニズム

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