Subject   : TMRSS2(膜貫通型セリンプロテアーゼ)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 TMRSS2(膜貫通型セリンプロテアーゼ)
 TMRSS2は、細胞表面膜に存在するII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(Transmembrane serine protease 2)の略称。SARS-CoV-2のS-タンパク質は、宿主受容体に結合した後、TMPRSS2によってタンパク質分解を受けると言われている。このS-タンパク質の分解がなければ、膜融合は進行しない。

この理由は、S-ACE2結合の後で、ヒト酵素であるTMPRSS2がS-タンパク質外側の切片(S1:膜表面に突き出している部分で、ACE2との結合には適しているが、嵩張っている大きなタンパク質であり、膜融合の立体的障害となる)を取り除き、内側の切片(S2:fusion peptide、融合ペプチド)を露出させ、S-タンパク質のS2切片がウイルス細胞膜とヒト細胞膜を融合させるからである。つまり、ヒトの酵素であるTMPRSS2が、外敵であるウイルスのゲノムが自己の細胞内へ侵入できるように手助けしているのである。

 ■ 日本病態プロテアーゼ学会
 近年になって、遺伝子改変マウス(TMPRSS2ノックアウトマウス)を用いてII型膜貫通型セリンプロテアーゼのひとつTMPRSS2がインフルエンザウイルスの生体内活性化プロテアーゼであることが示された。類似の実験が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と中東呼吸器症候群ウイルス(MERS-CoV)についても行われ、TMPRSS2がコロナウイルスの生体内での増殖にも重要であることが示された。さらにTMPRSS2が、SARS-CoV-2の感染を明らかに増強することが示されています。<日本病態プロテアーゼ学会より>

 ⇒ セリンプロテアーゼ (Serine Protease)

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