Subject   : 真核生物の誕生

カテゴリー  : 学びの館 > 生物学 


 真核生物の誕生
 酸素が増加して環境が変化してきた時点では、生物界には大きく3つのグループが出来ていました。  最初に誕生した生命は自然にある硫化水素などの栄養資源を分解する古細菌です(これには異論もあり、最初に現れたのは真性細菌で、真性細菌が細胞壁を失い、古細菌がそこから現れたとする説もあります)。  そこから資源のないところでも自分自身で栄養を作り生きていける化学合成細菌・光合成細菌(シアノバクテリア)などの真生細菌が誕生します。  その増殖に伴い海の底に沈んでいき、たまった細菌の死骸は有機物として新しい栄養源となります。海の底で暮らしていた古細菌の中から、それを食べるために適応してくる原始真核生物が現れます。  真生細菌の進化は自分で栄養を作り出す生産者としての進化ともいえます。それに対し、原始真核生物は他の生物が作り出す栄養に依存する形で進化していきました。  細菌類は小さな体で最小限の遺伝子を持ち、増殖スピードを最大限にさせる戦略を取りましたが、原始真核生物は栄養を自分の体内に取り込んで消化するために、細胞のサイズを大きくさせていきました。細胞膜の発達と共に次第に核の構造がつくられます。核の存在は多量の遺伝子を持つことを可能にします。核の存在は進化の方向に大きく影響を及ぼします。

<出典:Wikipedia>

 ■ 原始真核生物の進化
  最初、原始真核生物は酸素のない海の底で暮らしていました。  20億年前頃、酸素が増えることにより、環境が変化します。酸素は生命にとっては恐ろしい毒物です。酸素に傷つけられた生物は死滅してしまいます。海中に酸素が増えるに従い、原始真核生物は酸素の脅威にさらされるようになります。  しかし、危機にさらされた生命は危機を乗り越えるために次の段階に進化します。

 ひとつめは「酸素分解酵素」です。酸素が遺伝子を傷つけることから自分を守ることが可能になりました。

 さらに重要なのがふたつめの「異なる生命の取り込み」です。この時点において誕生していた細菌の中には酸素を利用してエネルギーを作り出すものがいました。原始真核生物は、細菌を食べるために一旦体の中に取り込んでから消化・吸収をします。その過程で光利用細菌を取り込んだ後、消化せずに自分の体内で生かし続け、酸素の利用をさせるものが現れたのです。  太古の昔に生命の取り込みが行われていた証拠は、私達の体の中にもしっかりと残っています。それが現在のほとんどの生物の細胞内に見られる ミトコンドリアです。

 ミトコンドリアを得ることにより、それまで毒物でしかなかった酸素を利用して大きなエネルギーを獲得する方法を得ることができました。それ以外にも複数の生命がお互いに取り込み、あるいは取り込まれていきながら激変する環境の中を生き延びていきました。  酸素に対抗する能力を持てなかった生命は死滅するか、あるいは酸素のない環境で生き延びるかどちらかしかありませんでした。

ミトコンドリアは核の中の遺伝子とは別の遺伝子を持っています。その起源ははるか昔、宿主の細胞に取り込まれた別の生命だといわれています。
 また、ミトコンドリア以外にも、べん毛や葉緑素など、この時期に異なる生命が合体することによりできた名残が現在の生命に残っています。

 光合成細菌が出した酸素による環境汚染は、生物に新たな進化を遂げさせます。現在の生物の体の中にミトコンドリアがあることは、この世界に残っている生物は全て、かつて幾度もの激変をくぐり抜けた生命の子孫である、そのことの証拠でもあるのです。  別の生命を取り込み、その生命が持っていた特異な機能を自分のものにすることによって、弱点を克服すると共に新しい能力を持つことが可能になりました。

 こうして約20億年前に本格的な真核生物が誕生します。大きな体に大きなエネルギー、そして様々な機能と膨大な遺伝子を持てるようになった彼らは、その後、進化の表舞台に躍り出ることになります。  細菌類は現在でも衰えることなく繁栄を続けてはいますが、最小限の遺伝子で生きることを選択したため、大きな形の変化はしませんでした。

 ⇒ 地質年代表

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