Subject   : ミトコンドリア(mitochondrion)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 ミトコンドリア(mitochondrion)
 ミトコンドリア(mitochondrionの複数形: mitochondria)は、ほとんど全ての真核生物の細胞の中に存在する、細胞小器官の1つである。ヤヌスグリーンによって青緑色に染色される。
ミトコンドリアは脂質二重層でできた外膜と内膜を有し、膜には様々なタンパク質が存在する。ミトコンドリアでは、高エネルギーの電子と酸素分子を利用して、ATPを合成する。すなわち、ミトコンドリアは真核生物における好気呼吸の場である。

ミトコンドリアは球あるいは回転楕円体状の形をとることが多いが,トリパノソーマのキネトプラスチドのように,網目状となっているものもある。哺乳類の肝臓の細胞には1500個ものミトコンドリアがあるが,赤血球には1つもない。細胞内でエネルギーを必要とする部分には特にミトコンドリアが密集している。ミトコンドリアは母系遺伝する。
 ミトコンドリアは独自の核(核様体)をもち,数〜数十コピーの環状二本鎖DNAを含んでいる。ミトコンドリアは形を変えたり,細胞分裂などではミトコンドリアも分裂して数を増すが、細胞周期とは少しずれがあるという。ミトコンドリアは,進化の過程で真核細胞のもとになった細胞に取り込まれ共生関係になったaプロテオ細菌(光合成能を失った紅色光合成細菌とされている)に起源を発するとされている。最近、細胞のプログラム死(アポトーシス)にもミトコンドリアが関わっていることが分かってきた。

ミトコンドリアの主要な役割は細胞にエネルギー( ATP)を供給することであるが,種々の代謝系も含まれる。

 ミトコンドリアには,外膜(outermembrane)と内膜(inner membrane)の2枚の膜がある。外膜にはチャネルを形成するポーリン (porin) という大型のタンパク質があり、かなり大きな分子もこのチャネルを通って膜を出入りできる。また,アドレナリンの酸化、トリプトファンの分解、脂肪酸の伸長などが行われる。 対照的に,内膜は透過性の悪い膜で,イオンを通さず,極めて選択性に富んでいる。内膜には呼吸鎖の酵素系や輸送タンパク質がびっしりと敷きつめられ,膜重量の70〜80%を占めている。
 外膜と内膜の間を膜間腔または膜間スペース(intermambrane space)といい,ミトコンドリアの機能に重要な働きをしている。内膜はさらにひだ状に内側に入り組んでクリステ(criatae)を形成している。大部分の生物のクリステは平板状をしているが,管状やうちわ形のクリステをもつ生物もいる。内膜で包まれたミトコンドリアの内部をマトリックス(matrix)という。マトリックスには高濃度(500 mg/ml)の水溶性タンパク質が存在し,尿素回路(肝臓), TCA回路, 脂肪酸のβ-酸化などが行われる。
 ⇒ 真核細胞(eucaryotic cell)

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