Subject   : 抗体依存性感染増強(ADE)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 抗体依存性感染増強(ADE)
 ウイルス粒子に抗体が結合することで感染が増強する現象。

抗体はウイルス感染防御に重要な機能を担う一方で、ウイルスに対する抗体によって感染が増悪する現象が知られており、その現象は抗体依存性感染増強(ADE)といいます。

これまでは、ウイルス粒子に抗体が結合すると、抗体の受容体であるFc受容体を発現しているある種の免疫細胞にウイルスが感染しやすくなると考えられていた。 デングウイルス等で見られる抗体依存性感染増強はFc受容体を介しているが、Fc受容体非依存性の抗体依存性感染増強機構が明らかになりつつある。

抗体依存性感染増強 ( Antibody-dependent enhancement, ADE) とは、ウイルス粒子と不適切な 抗体 とが結合すると 宿主 細胞 への 侵入 が促進され、ウイルス粒子が 複製 される現象である 。 不適切な抗ウイルス抗体は、食細胞の Fcγ受容体 (FcγR)または 補体 経路を経由して目標の免疫細胞のウイルス感染を促進する 。 ウイルスと相互作用した後、抗体は特定の免疫細胞または補体タンパク質の一部で発現されるFcγRに、Fc領域で結合する。 この相互作用は、免疫細胞によるウイルス抗体複合体の 食作用 を促進する。 通常は、食作用後はウイルスが分解されるが、ADEの場合は逆にウイルスの複製が引き起こされ、その後免疫細胞が死滅することがある。

 ■ 抗体依存性感染増強のメカニズム
 抗体依存性感染増強 (ADE) には2種類のメカニズムがあります。一つは上記のように抗体を介してマクロファージに感染する機構。ウィルスによってはマクロファージ内で増殖できます。あるいは増殖できなくともマクロファージを殺して枯渇させる事によって免疫系を暴走させるウィルスもあります。もう一つの機構は抗体と複合体を作ったウィルスが免疫系を刺激し、炎症系を暴走させる仕組み (サイトカインストーム) です。いずれの場合もウィルスの抗体の存在がウィルスの感染を誘導し、免疫系の症状を暴走させます。

 ⇒ ウイルスの種類

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