Subject   : リキッドバイオプシー(liquid biopsy)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 リキッドバイオプシー(liquid biopsy)
 リキッドバイオプシー(liquid biopsy)とは血液を始め、尿、唾液、脳脊髄液、便などの体液サンプルを用いて、がんの超早期検出や詳細な遺伝子情報の入手が可能となる斬新かつ画期的な医療技術です。

従来、患者ひとり一人の疾患の性質を捉えるには,疾患部位における細胞の遺伝子変異や遺伝子発現解析,病理画像による診断が行われてきました。内視鏡や針を用いた組織の生検(biopsy)検体や手術で切除した組織を用いるため、患者への負担が大きい検査になります。 一方、リキッドバイオプシーは採血など患者への負担が低い手法で診断材料を採取できるという利点から、繰り返しの採取が可能であり、定量的なモニタリングが可能となります。 画像診断や内視鏡検査などと比べても費やす手間が少なく済み、一度に多くの人を検査できるスループット性も高いことから、医療現場での人手不足の解消に繋がる期待もあります。

リキッドバイオプシーによる遺伝子検査は,検体採取に対する身体への負担が少ない検査であることから繰り返しの検査が可能であり,治療法の選択のみならず治療経過中のモニタリングにも有用です。 リキッドバイオプシーにおいて議論すべき点は、用いる検体と検出手法である。血液など体液から採取可能な検体種として、血中循環腫瘍細胞(CTC)、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)、細胞外小胞(EVs)、血中循環遊離RNA(cfRNA)、マイクロRNA(miRNA)などのバイオマーカーが考えられています。

リキッドバイオプシーはさまざまな疾患で臨床応用が検討されていますが、特にがん診断でその活用が期待されています。 がん細胞は発生後、宿主の免疫からの攻撃を逃れながら増殖し、クローン進化も遂げながら、免疫を欺く術も覚え、自らに栄養を導く血管を引く能力を発揮しながら成長していきます。こうしたがん細胞のダイナミズムに応じた治療の戦略が求められるわけですが、この過程を組織生検や画像検査で逐次捉えることは不可能です。ただ、腫瘍は成長する過程で一部の細胞や腫瘍に由来する検体(細胞やDNA、エクソソームなど)を血液や体液に放出します。血液中や体液中に循環している疾患由来成分を検出して治療に役立てようというのがリキッドバイオプシーです。 なかでも、腫瘍細胞から血液中に漏れ出た腫瘍由来DNAである血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた遺伝子パネル解析は、治療後など組織検体の採取が難しい場合でも採取が可能であり、治療中に薬剤の耐性化機構として獲得された新たな遺伝子変異の検出なども期待されており、肺癌患者に対してEGFR遺伝子変異の血漿検査が保険償還されるなど、がん疾患領域におけるリキッドバイオプシー検査の実臨床への展開が進んでいいます。 ctDNAはがん細胞に由来するため個々の患者のがんに生じている特有の変異を共有しており個別化血液バイオマーカーとして期待されます。

ctDNAの包括的なゲノムプロファイリングを取得することにより非小細胞肺がんにおける遺伝子変異等に応じて抗がん剤の選択に用いられ、また、固形がん一般において「エヌトレクチニブ」の投与が有効なNTRK生検の変異を検出や、前立腺がんにおいて「オラバリブ」の投与が有効なBRCA遺伝子変異を検出します。

<出典:>

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